第42話:水の防壁の内と外

両チームの分身能力者について:


江上 奈瑠(海元高校ビーチバレー部)

・同時に出せる分身は最大20人

・持っている武器等も複製可能


八刀島 凛(八百万の獣獣)

・同時に出せる分身は最大7人

・持っている武器等も複製可能

・本体を分身の1人に移すことが可能(消耗が激しく数回が限度)

・自身の周囲だけでなく、自身の体の一部の周囲にも分身を出すことが可能


――――――――――――――――――――


 バトル開始直後、海元高校の水鳥 雫は異能力「水使い」を発動して周囲に大量の水を出現させる。

 水の塊は急激に巨大化し、数十秒後には直径100メートルほどの半球形の防壁が出来上がった。


(双子が昔のままならこれでほぼ防げそうだけど、流石にそんなに甘くないよね)


「奈瑠ちゃん」

「はい」


 次に後輩の江上 奈瑠が異能力「分身」を発動。銃で武装した20人の分身たちが水の防壁の外側を巡回し始めた。


「みんな気を付けてね。笛野の双子もやばいけど支援サポーター3人もまあまあ化け物らしいから」

「「了解」」


(さて、いつも通りの水の防壁。どう対応してくるかな)


『ドォォォォン!』


 突然の衝撃と共に、水の防壁に大きな穴が空いた。


「一撃で!? ……ごめん、防ぐ」

「驚いたな」


 水鳥が防壁の穴を防ぐ数秒の間に、穴から濃い霧が流れ込むのが見える。そして、大橋は高い視力で猪の群れが入って来たことに気付く。


「霧に紛れて動物が入って来ています。猪が20頭以上」

「分身を内側に戻しますか?」

「いや、俺が迎撃してくる」

「俺も行きます」


 津和崎 徹と大橋 雷斗はすぐに猪の迎撃に向かった。








 数分後、津和崎と大橋との戦闘により防壁内の猪は徐々に数を減らしていた。


「猪が残り数体。髪の配置は完了したよ」

「お、ないすー」


 北鍋が異能力「獣使い」によって動物たちと視界を共有し、防壁内部の様子を獣獣のメンバーたちに伝える。


「凛ちゃん、一発勝負だからね? 外さないでよ?」

「分かってる」


 八刀島 凛の異能力「分身」は自身の周囲だけでなく、自身の体の一部の周囲にも分身を出すことが可能である。北鍋は猪に紛れ込ませていた小動物によって狙撃可能な地点を見極め、八刀島の髪を配置していた。








 その頃、水の防壁の内側では津和崎と大橋が残りの猪たちを追い詰めていた。


「そりゃっ!」


 津和崎が円盾を投げて異能力「回転操作」を発動。高速で回転しながら飛ぶ円盾の軌道を操り、猪を次々に両断していく。


「あと5体ですね。前方に見えてるので最後です」

「りょーかい、これで最後っと」


 津和崎が戻ってきた円盾を再び投げた次の瞬間、


『バンッ』


 どこからか一発の銃弾が放たれ、津和崎の頭部を撃ち抜く。


「徹さん!」


『ドーーン!』


 大橋は視界に捉えた分身に雷を撃ち込むと、津和崎に駆け寄る。


「くそっ! やられた」



「津和崎 徹、死亡」

「海元高校ビーチバレー部、残り4名」








 1分後、津和崎の脱落を伝えるアナウンスが響く。


「凛ちゃんナイス! うぇーい!」

「ありがとう。もう同じ手では倒せないだろうが、プレッシャーにはなるだろうな」


 ここで、水の防壁の近くにいた笛野 向葵と霧峰 柏太が戻ってきた。


「ここであの円盾使いを落とせたのは大きいな」

「もう1回やる? おいらまだ余力残ってるぜ?」

「どうしようか……っ!」


 ここで、上を見た向葵が驚く。


「どうしたの?」

「藻部山と大橋だ」


 次の瞬間、上空に無数の雷雲が出現した。

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