第36話:古豪対決、決着

現在の戦況(超神威 vs 関西格闘協会):

※両チームとも残り4人

・超神威の開始地点

氷河 vs 山嵐


・〃から離れた場所

根藤 & 凍次 vs 猟凱 & 伏見


・さらに離れた場所

佐呂間 vs 舟木


――――――――――――――――――――


 舟木 基は水平に張った結界の上を走り、すぐに佐呂間 雪に追いついた。


「やるやんけ、雪使い」


 舟木は異能力「結界」を発動し、周囲を見えない壁で囲う。 佐呂間は異能力「降雪」により、雪の上に結界が張られたことを把握した。


(10メートル四方の結界。こうなったら私の力では逃げられないし、他のメンバーが駆け付けてもすぐには助けられない)


 佐呂間は一旦、広範囲に降らせていた雪を止めて意識を集中させる。


(一か八か、やるしか無い)


 佐呂間は再び異能力を発動し、舟木との間に雪の壁を作り出す。


「そんなんじゃ俺の攻撃は防げへんで? おらぁ!」


 舟木は雪の壁を一撃で破壊して穴を空ける。


「うおっ!?」


 穴の向こうで、佐呂間は隠し持っていた拳銃を構えていた。


『バンッ』


 舟木は異能力で顔の前に結界を張り、銃弾を弾く。


(防がれた……!)


 佐呂間は次の銃弾を放つが、舟木は難なく躱すと一気に距離を詰める。


「ぐはっ!」


 腹に舟木の蹴りが入り、ふっ飛ばされた佐呂間は数メートル先の地面に倒れる。


「佐呂間やっけ、正直驚いたわ。こんなに手こずるなんてな」


 そう言いながら、舟木は仰向けに倒れた佐呂間に近づく。


「……ふふっ」


 佐呂間が空を見上げて笑ったのを見て、舟木は足を止める。


「思ったより早かったね……凍次くん」

「何……っ!」


『バリーンッ!』


 結界の天井部分が破壊され、舟木は後ろに飛び退く。


『ドーン!』


 佐呂間と舟木の間に着地した冬海 凍次は、異能力「氷使い」を発動して手元に氷柱を出現させ、舟木に向ける。


「てめぇ……よくもやりやがったな」

「すごい殺気。氷河さんより迫力あるんやない?」


 舟木は格闘術の構えを取る。



「猟凱 大醐、伏見 豪久、死亡」

「関西格闘協会、残り2名」



 ここで、猟凱と伏見の死亡を知らせるアナウンスが響く。


「あの2人負けたん? まじで?」


 舟木は驚きつつも凍次に向かって距離を詰め、接近戦を挑む。


「なら、俺が全員ぶっ倒せば大逆転やな」




 舟木が接近してくるのを見た凍次も、氷柱を構えて突進する。


(舟木の戦闘スタイルは知っている。結界を一瞬だけ張って相手の打撃を防ぎ、カウンターを仕掛ける。だから……)


 凍次の予想通り、舟木は氷柱の刺突が来る位置に一瞬だけ結界を張る。


(それを見越して高威力の攻撃を叩き込む!)


『バリーンッ!』


 凍次が突き出した氷柱は結界を一撃で貫通させ、そのまま舟木の体も貫いた。


「がはっ! 何……やと……」


 舟木は地面に崩れ落ちた。




「雪、大丈夫か?」

「大丈夫。何ヶ月か前にされた膝蹴りの方がずっと痛かったし」


 凍次に声を掛けられ、佐呂間は体を起こす。


「雪に膝蹴り? 許せねぇな。どこのどいつだ」

「きみだよ」

「え?」



「舟木 基、死亡」

「関西格闘協会、残り1名」








 超神威の開始地点では、冬海 氷河と山嵐 武が戦闘を繰り広げていた。


「はっはっ! そんな守りに入っとったら俺には勝てへんで!」

「派手にやりゃ良いってもんじゃ無いんだよ」


 山嵐は異能力「風使い」によって発生させた風の刃を無数に放つが、氷河は異能力「氷使い」によって氷塊を出現させ防いでいく。


 一進一退の攻防を繰り広げていた2人だったが、氷河が突然動きを止める。


「残念だが勝負は次の入れ替え戦までお預けだ」

「はあ? 何言って……」


 次の瞬間、山嵐の胸が左右に裂け、植物の根が生えてきた。


「まさか……」


 山嵐はなす術なくその場に倒れ、即死した。


「悪いなリーダー、横取りしちまった」


 少し自慢げな表情をしながら、根藤 滝生が姿を現す。


「勝てれば良い良い」


 氷河は空を見上げる。


「いやー早速3キルもしちまったぜ。みんな調子良さげだし、このまま優勝まで行けるんじゃねえか?」

「ああ、だが油断はするなよ」

「分かってるって」



「山嵐 武、死亡」

「関西格闘協会、残り0名」


「勝者、超神威」








 勝利を収めた超神威のメンバーたちは、会場中央のステージ上に転送された。氷河はモニターを見上げて表示されているダイジェスト映像を確認する。


(キル数は偏ってるが、みんな結構良い戦いしてるな)


「みんなお疲れ様。素晴らしい勝利だったよ」


 この試合では控えだった副長の白金 碧が、ステージ上に戻ってきたメンバーたちに声を掛ける。


「次は出ろよ。碧」

「ふふっ、それは相手にもよるかな。僕は決勝戦で初の出番でも良いけどね」

「まあ、戦略面はお前に任せるよ」


(去年以上に強いメンバーが揃っている上に、最強クランのUNDEAD CHAMPSも既に敗退している。ようやく俺たちに優勝のチャンスが巡ってきた感じがするな)


「全部勝つぞ」

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