第11話:大規模チーム、崩壊

 八刀島の予想通り、大規模チームはすぐに崩壊を始めた。


 1キルごとに賞金が発生するルールに加えて、メンバーを招集した本人は音信不通。疑心暗鬼に陥り味方を裏切り殺害しようとする動きが複数発生し、チームは完全に統率を失った。


 混乱から抜け出して逃走した者も多くいたが、北には冬海 & 闇沢ペア、東には炎崎 & 後藤ペア、南には小内、西には裂山と、周囲のエリアで待機していた参加者たちによって次々に殺害された。


 こうして、バトルロイヤル開始から1時間の時点で27人残っていた参加者は、30分後には18人にまで減少した。








「わっはっは、燃えろ」

「いやセリフが雑過ぎる放火魔じゃないんですよ」


 大規模チームがいたエリアの東側では、炎崎 優と後藤 強弥の2人組が元大規模チームのメンバーを迎撃していた。

 特に炎崎の異能力「炎使い」は細長い炎を遠くまで伸ばすことを得意としており、50メートル以上のリーチを活かして効率的に他の参加者を殺害していた。


「2キルかぁ。思ったほど殺れなかったな」

「まだ前半なんで全然良い調子じゃないですか? あ、後ろから誰か来てますね」


 後ろを見ると、遠くから金髪の女が歩いて来ていた。


「まだ少し遠いな。射程に入ったら焼き払ってやる」


 金髪の女は事前予想8位の深浅しんせん あかり。後藤たちに気付いたようで、足を止めると彼らの顔を見る。


「ひっ」

「なんつー殺気だよ。もう焼くぞ」


 炎崎が放った炎が深浅に迫るが、彼女は慌てる様子もなく炎崎を指差す。


「……なんか殺されそう」

「優さん!」


 次の瞬間、深浅の指先から光線が放たれ、炎崎の首が切断された。それを見た後藤は全速力で逃げる。


(今のは「光使い」か? だとしたら攻撃を避けるのは困難だな)


 不利を察した後藤は一旦その場を離れることにした。


「炎崎 優、脱落。残り17名」








 その頃、西側で大規模チームのメンバーを迎え討っていた裂山 風花も何者かの気配を感じていた。


(どこだ。絶対に近くに何かいる)


 すると、茂みの向こう側から動物がこちらを覗いているのが見えた。


(あれは……鹿?)


 鹿は裂山と目が合うと、走ってどこかへ逃げて行った。


(なんだ動物か、驚かすなよ)


 裂山は安心して警戒を解く。


(いや、フィールドに動物がいるの初めて見たな。まさか誰かの異能力か?)


『グサッ』


「っ!」


 突然、裂山の胸にナイフが突き刺さり、目の前に霊泉 葵が現れた。霊泉は楽しそうな表情で裂山の頰に触れる。


「いい顔だね」

「お前……」


 裂山は最後の力を振り絞って異能力を発動させて風の刃を放つ。霊泉は際どく躱すと2撃目を加え、裂山は倒れた。


「危なかった。鹿いなかったら見つかってたかもね」


「裂山 風花、脱落。残り16名」

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