EP013:高度一万!大巨重空中激戦!

 帝国軍秘密基地を発見せり。


 その一報は、反乱軍総司令部ガンダラクシャの目と鼻の先に帝国軍基地が建てられたことを伝えた。


 帝国軍が無茶をしてまでイリア山脈の高山地帯に大戦力を配備しているのはこのためだったのか?


 反乱軍はガンダラクシャから出陣した。


 ガミュラズを中心とした空中機動部隊。


 それがガンダラクシャの隠された滑走路から次々と飛びたち、帝国軍秘密基地を目指す。他にも空中部隊を支援するため隠されていた陣地へとFBが展開していた。


 同時刻──帝国軍秘密基地にも警報だ。


 フルメタルビーストさえ凍りつくイリア山脈・要衝ボサレウ山の、岩と雪の地で死闘が始まる。


「哨戒中のガミュラズか。厄介だぞ」


「だから、こちらも新兵器を待った」


 ガミュラズ率いる反乱軍空中部隊に苦戦する帝国軍は、ガミュラズに匹敵するフルメタルビースト…………コウモリ型ギュオスを投入する。


 激突する宿命の二機と二人。


 勝敗のゆくえはどうなる!?


 最初の火蓋をきるのは反乱軍だ。


 反乱軍砲撃部隊の白と黒で塗装がされたカノンリウム──キャノンの取り付けや運用のノウハウが増えて、ガリオニクスのキャノンと同じレベルにまで改良されている──が砲撃の位置につく。


 ガリオニクスのキャノンを拡大して生産した砲のロックを外して、ゆっくりと狙いをさだめる。


 時刻は深夜。


 夜間、山を挟んだ短くも激しい長距離砲撃でもって帝国軍を混乱させ、空中部隊の突入を援護する作戦だ。


 ガミュラズが闇を駆け抜けて帝国軍秘密基地を強襲する。


 帝国軍の強力な対空陣地は、まるで目の効かない深夜でも、見えているかのようにガミュラズの空爆を迎え撃つ。


 対空砲弾が炸裂するたび、一瞬、夜が解ける。


 光にさらされるたびガミュラズが傷ついている姿を見せる。


 だがガミュラズが囮になっている間に、反乱軍の航空部隊の重爆撃は、帝国軍秘密基地の雪上戦力を次々と薙ぎはらう!


 しかしガミュラズの前に帝国軍が立ち塞がる。


 地上ではない。空だ。空中戦だ!


 夜の白い闇を突き破って、帝国軍FBギュオスが空中戦を仕掛けてきた!


 大きい。


 サイズはガミュラズに劣らない。


 だが、フォルムはあまりに異様。


 コウモリ型FBであるが、フォルムだけでは鳥型と錯覚する。


 ギュオスの動きは雪崩よりも速く、破壊的で、一機、また一機と反乱軍FBが撃墜されていく。


 闇夜を火の玉となり落ちていく反乱軍FB。


「あの怪鳥を引き離してやる!」


 ガミュラズのパイロットは、帝国軍大型飛行FBといえども遅れをとるなど微塵も考えていない。


 空中戦をしたいのならば空中戦でこたえる!


 ガミュラズはヘイグス重力干渉翼を展開、足のジェットロケットを点火して飛びあがる。


 雪煙を突き破るガミュラズ。


 そこをギュオスが待ち伏せしている!


 頭上をとったギュオスは、口を開く。


 帝国軍FBで『口』があるのだ。


 ただの怪鳥というわけではない。


 ギュオスの口にエネルギがたまり光る。


 光は凍える風を切り裂き……命中した。


 ガミュラズが悲鳴をあげる。


 なんということだ。


 ガミュラズの最高レベルの防御力、もっとも頑丈であるはずの甲羅、アーマシェルが貫かれて、溶けた装甲が太陽のような色になって流れている。


 したたる鋼鉄が雪を水蒸気に変える。


 ガミュラズまで追い詰められていく。


 ギュオスの武装はガミュラズを凌駕している。


 帝国軍最高技術で作り上げられた光線兵器ヘルフレイムレイだ。これを防げるFBは惑星上に存在しない。


 絶対絶命。


 その時!!


 追い詰められたガミュラズは傷ついたアーマーシェルからEMシールドが展開する。


 これこそエレクトロマグネティックシールド。


 ガミュラズなど空を飛ぶFBが利用する、ヘイグス干渉翼を応用した最後の武器である。


 ギュオスの放った強力なレーザも、磁場と重力のシールドの前には空間ごと捻じ曲げられてはずれる。


 ガミュラズの反撃が始まる。


 EMシールドを全開に突進。


 特大FBのガミュラズといえども、EMシールドの消耗は激しい。


 僅か数秒しか維持できないものだ。


 ガミュラズのパイロットは迷わず。


 ギュオスに対して決死の戦いを正面から挑む。


 ヘルフレイムレイがさらに放たれる。


 だが……EMシールドがねじまげる。


 ギュオスの帝国軍パイロットは、ボロボロであるガミュラズが命を捨てて道連れにしようとしている、と、考える。


 帝国軍パイロットは獰猛に笑う。


「よろしい!正面から──!?」


 ギュオスのパイロットはやる気だった。


 しかし、ギュオスはひるんでいる。


 帝国軍の他の多くのFBのようにギュオスは改造で完全に制御されているわけではない。


 それが裏目に出たのだ。


 ギュオスはパイロットを無視した。


 ひるんで、逃げだそうとしていた。


 ガミュラズとパイロット、そして帝国軍パイロットも、その隙の重さを理解していた。


 一瞬で勝負がつく…………!


 戦場の女神は勇敢な兵士へ微笑んだ。


 背中を向けたギュオスの翼を、ガミュラズのサンダーネイルが引き裂いた。


 きりもみしながら墜ちるギュオスの風を裂く音が断末魔のようにイリア山脈に響く。


 ガミュラズも重傷だ。


 溶けたアーマーシェルはすでに固まっている。


 だが、酷いありさまである。


「こちらガミュラズ、あとは任せた」


 ガミュラズはガンダラクシャへ帰還する。


 今しばしの修理を必要としていたからだ。


 しかしガミュラズが強敵ギュオスをしりぞけたことで反乱軍空中部隊は、秘密基地の防空システムを突破──夜の氷上へと次々と兵力を展開することに成功する。


 帝国軍秘密基地は目の前だ!

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