反抗期の娘?親友とお茶タイム
合格発表まで落ち着かない日を過ごした。
メロディも“自信満々!”と言っていた割に、ソワソワした様子で落ち着かないみたいだ。さっきから、しきりにバイオリンの練習に打ち込んでいる。
「メロディ、あなたならば大丈夫よ。もし、特待生試験に合格しなかったとしても、一般入学ならばウイナ音楽院に入学できるわ」
「そんなの、悔しい」
「悔しい、だなんて……」
自分がかつてウイナ音楽院で苦労して学んでいたことを思うと、才能あふれる娘の言葉にちょっとフクザツになる。
「......はあ。あなたは恵まれた環境に生まれたことを分かっていないようね。それに、あなたの才能はあなただけで得たものではないわよ。きちんとそのあたりを考えるべきだわ」
ビリシと言うと、メロディは言葉を飲み込みそっぽを向いて部屋を出て行く。
「あれが反抗期というものなのかしら?......もう」
強気な娘のことである。練習も人一倍やるがプライドが高い。
「先が思いやられるわね......」
ヤレヤレと思いながら、フローレンスに手紙を届けさせると、すぐに返事があった。
午後にお茶をしよう!、と書いてある。
メロディも連れて行こうかと考えてメイドに娘の様子を聞くと、どうやら昼寝をしているらしい。
「ふて寝? しばらくそっとしておくのがいいのかもしれないわね」
ルイーズはメイドに友人とお茶をすると伝えると、街のカフェへと向かった。
「ルイーズ!久しぶり!」
カフェに着くと、相変わらず元気の良いフローレンスがこちらを見て手をブンブンと振っていた。
「あなたは変わらないわね。とても子どもが2人いるようには見えないわよ?」
「それって褒め言葉?メロディちゃんは屋敷に置いてきたわけ?」
「ええ。あなたも子どもを連れて来るとは言っていなかったし」
「うちの子たちは学園に通っているからまだ帰ってこないの。今度、ルイーズに紹介するわね。とってもいい子たちよ!」
フローレンスが子ども自慢を始めた。すっかり、彼女も子どもを愛する母そのものだった。
「……で、メロディちゃんは反抗期ですって?」
「そうかもしれないわ。自己主張がハッキリしている分、扱いが難しいの」
「へえ。そんなツンツンしたルイーズの娘が、もしかしたらアードルフ兄の生徒になるかもしれないんだ!?」
「まだ、そうと決まったわけではないでしょう。それに変な言い方をしないで」
フローレンスは楽しそうである。
「だって、昔の恋人の娘が生徒になるかもしれないなんて面白ろすぎる!」
「悪趣味よ!フローレンスたちのお子さんは音楽の方へ進ませなかったのね」
「うちは、音楽は趣味でやらせようってコンラートと話していたの。……音楽に本気で挑ませようとするルイーズたちは大した覚悟だと思うわ」
フローレンスたちの親心はとてもよく分かる。
「私も娘がこうして音楽の道に本格的に進むとは思っていなかったわ。しかも、ウイナ音楽院に通うかもしれないなんて」
「そういうことを考えると、案外、アードルフ兄とは運命的な縁で結ばれていたってことかもね?」
「からかわないで。私はレウルスと結婚したのよ」
「誰も運命の赤い糸だなんて言ってないでしょ?運命的な縁って言っただけ」
もう!、とタメ息をつくと、これだけは言っておこうとフローレンスを見据えた。
「ちなみにだけど、当然ながら娘にはアードルフとのことを話すつもりはないの」
「うん、分かってる。話したら今のメロディちゃんにはフクザツ過ぎる」
すぐに理解を示してくれたフローレンスとは別れると、屋敷に戻ったのだった。
……そしてついに3日後、特待生試験の合否の結果が手紙で届いた。
「ホラ、私は才能に恵まれているでしょ!?」
上機嫌な声が屋敷に響きまくっている。メロディは満場一致で合格していた。
合格の通知にルイーズも思わず涙ぐんだ。
「やったわね!さすが私たちの娘だわ!」
メロディを思い切り抱きしめると“ママ、くるしいって~”と照れくさそうにメロディが言う。
「さっそく、練習しよっと!」
メロディは、ルイーズの腕から逃れるとさっそくバイオリンを弾き出した。
「ママは、入学手続きに行って来るわね!」
急いで外出の用意をすると、弾むような気持ちでウイナ音楽院へと向かったのだった。
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