アードルフとのデート
アードルフはルイーズをお姫様のように扱ってくれた。
恋人のフリをするようになってから、それらしく見えるように手をつないだりはしていたが、彼の本気を感じる行動はルイーズをドキドキさせる。
(ただ手をつなぐだけでも、以前よりずっとリラックスした表情を見せてくれているわ)
アードルフがこちらを見るたび、微笑むので少し戸惑う。
「ルイーズ、今さら照れくさい?」
「そうね。少しそう感じるわ」
「僕はさ、ルイーズの側にいたから君の魅力を知っているけれど、ルイーズは僕のいいところをまだ見つけていない?」
「そういうわけじゃないわ。アードルフは優しいし、いつだって私の味方でいてくれたじゃない。私はあなたにとても感謝しているし、尊敬しているわ」
「尊敬………レウルスのことも尊敬しているって言ってなかった?」
なんとなくアードルフが嫌そうにしている。比べられたような気がしたのだろうか。
「私の中で今、最も尊敬するのはあなたよ」
ルイーズが言うと、アードルフがルイーズを引き寄せた。
「証明してみせてくれない?」
「どうしろと言うの?」
「キスして」
今は馬車の中だ。アードルフに迫られて困った。
(なぜかアードルフはレウルスのことを気にしているみたい。今まで気にしていなかったのに)
意外と嫉妬するタイプなのだろうかとか、前に婚約者に駆け落ちされたことが彼を不安にさせるのだろうかと考えてしまう。
「ではアードルフ、目を閉じて」
「うん」
アードルフはルイーズの言われた通り素直に目を閉じた。
(ふふ、年上なのに素直に言うことを聞くところが可愛らしいわ)
そろりと近づくと触れるだけのキスをした。
「え、もう終わり?」
「ええ」
「証明には足りないよ」
「どうして証明が必要なの?」
「それは………ルイーズにしっかりと僕を見て欲しいから」
(この人はやはり不安なのね......)
「私はいつだってあなたの側にいるわ。心配しないで」
「うん。じゃあもう一度だけ」
甘えるように言うアードルフにお願いされてルイーズはもう一度、口づけをしたのだった。
.........街に着くと、馬車を降りて街を歩く。お目当ての店には馬車置き場から少し距離があった。
「ルイーズ、手をつなぐのもいいけど、腰に手を回してもいい?その方がしっかりと守れているような気分になるんだ」
「え、ちょっと恥ずかしいけれど。...........いいわ」
ルイーズが許すと、アードルフはさっそくルイーズの腰に手を回して引き寄せる。
(思ったよりも密着することになるわね………)
ダンスとは違って腰に手を回されて歩くのは、思った以上に接近することになる。
店に入ると、アードルフはルイーズに合いそうなドレスをあれこれと勧めてくれた。おかげで試着するだけでかなりの時間を要した。
「たくさんドレスを試されましたからお疲れになりましたよね。お茶をどうぞ」
店員が気を利かせてお茶を出してくれる。
「アードルフ様はルイーズ様をとても大切にされているんですね」
「ええ……」
アードルフは、ルイーズが試着したドレスを早くも購入するといって数着、買い上げていた。
「後でアクセサリーもお見せするように言われていますよ」
「そうなの?」
アードルフも自身の服を試着し終わると、ルイーズの元に戻って来た。
「アードルフ、ドレスのプレゼントをありがとう。もうこれ以上の気遣いは大丈夫よ」
「ドレスにはアクセサリーが無くては恰好がつかないよ。贈らせて」
アードルフがルイーズの手にキスしながら言う。彼には絶対的な余裕があった。
(お金に困らないアードルフだからこそできるデートよね。レウルスだったらこうは……)
自然とレウルスと比較して考えて、考えるのを止めた。
(レウルスとはもう、なにも生まれない関係なのだから考えるだけ無駄だわ)
「アードルフ、私はどうお返ししたら良いのかしら?」
「君が側にいてくれることがお返しだよ」
アードルフの言葉はものすごく甘かった。
公爵令嬢である自分ならば、こういった余裕のあるやりとりは当たり前だったのかもしれない。ヘンリーがしっかりしていなかっただけで、本来はこのように扱われるべき存在であったのだと、そんな気持ちになる。
(..........でも、殿下が私を大切にする気持ちが足りなかったからこそ、余計にレウルスが私の中にスッと入って来たのよね)
もしも、という想像はできても今、現実に起きているのはなるようになった結果だと思わざるを得ない。
アクセサリーを選び終えると、アードルフに腕を絡ませながら店を出た。
「アードルフ、ありがとう」
「どういたしまして」
微笑むアードルフが幸せそうで、ルイーズも微笑んだ。
「今度は私があなたにお返しをしなくては」
「え、なにを?もしかしてキ………」
すぐに彼はキスをしたがる。
「まずはお茶をしましょうね」
ふふと、笑いながらアードルフと腕を組みながら街を歩いたのだった。
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