貴族達のウワサ

フルンゼ楽団を招いての音楽演奏会は出席していた貴族達にちょっとした衝撃を与えていた。


「いやあ、ほぼ平民で構成された楽団だというからどんなものかと思っていたが、割と聴ける演奏であったな」

「あら、私は生き生きした演奏で若さを感じて良かったですわ」

「今度、うちの音楽サロンにも呼んでみるかな」

「楽団長をしている男はサンス男爵令息だろう?あの一家は音楽家だからな。平民でも優れた音楽家を育てることができたのだろう」

「レイニー様って素敵な男性よね」


貴族達は好きなように感想をあれこれ話していた。


「それよりも、殿下とルイーズ様とリリアン様の様子から目が離せなかったわ!」

「そうそう!なぜルイーズ様はベールなんてお召しになったのかしら。いつもベールを被ったりしないじゃない」

「それは、ほら、涙を流しても目立ちにくいからよ。私、涙を流すのを見たわ」

「あれは、演奏に感動したのではなくって?」

「違うわよ!あれはきっと殿下の横にリリアン様が座っていたからよ!だから、悲しくて泣いてらっしゃったのだわ」

「殿下も酷なことをされる。ルイーズ様は小さい時からご一緒であったのに。あんな美人を.....」


でもなぁ、と紳士が口を開いた。


「ルイーズ様はキリッとしてらっしゃる分、少々、キツめに見えないか?」

「私はあのキリッとした目元が実にタイプだがなぁ」

「君では相手にしてもらえないよ」

「失敬だな」


男性貴族達の多くはルイーズの美しさや聡明さは認めているものの、リリアン王女のこともウサギのような見た目が可愛い!という認識を抱いている。


「リリアン様は隣国の王女様であるから、あのまま殿下と一緒になっても良いと思うがな」

「殿下の姉上も他国に嫁がれている。我が国も隣国の王女を迎えても良いかもしれない」


貴族内でもルイーズを推す派とリリアンを推す派に分かれていた。


「王と王妃は、殿下がリリアン様に気を取られていることを嘆いていらっしゃるようだな」

「表面上は仲良くしていても、国境を巡っての争いは解決していないからな。隣国の王の策略だという意見もある」

「ルイーズ様には頑張って頂かないといけないのに、なにをやってらっしゃるんだ」


だんだんとルイーズ批判につながる意見も出てきた。


「ベールを被っておられたのも、リリアン様を見て涙を流すかもしれないと思ったからかもしれませんわね。お気持ちが弱いのですわ」


................こうして貴族達は好きなようにルイーズのことをウワサしていたのだった。


これを耳にしたルイーズの父と兄は怒っていた。


「娘を好きなように言いおって!」

「くそう!僕がリリアン姫を口説けていれば、好きなように言われなかったのに!」

「お前、まだそんなことを言っているのか」

「僕は本気で口説き落とすつもりだったのですよ。そうすれば国境問題もスムーズに解決できるかもしれないじゃないですか!」

「お前は優秀なはずなのにバカだな」

「そんなことはありません!僕は主席で学園を卒業したのですからね!」

「まぐれだろ」

「なんですと!」


下の階でなにやら騒いでいると思ってルイーズが様子を見に来てみれば、バカバカしい言い争いをする父と兄の姿があった。


(やっと城から帰って、気持ち良くバイオリンを弾いていたっていうのに。実にくだらないわ)


「あ、ルイーズ!今日の演奏会の後、貴族達が好きなようにお前のことをウワサしていたぞ!」

「私は城で会議をしていたが、同じ派閥の貴族連中が耳に入れてくれたのだ。実にけしからん!」


2人はプンプン怒っている。自分のために怒ってくれているのは嬉しい。


「もうウワサになっているのですね。そんなもの、いちいち相手にしていたらキリがないですわ」

「お前はそれで平気なのか?我が家を貶める発言をする者にはそれなりの制裁を下さねばならないぞ」


制裁を下すとなれば今日、招かれていた貴族のほとんどが該当するのではと思えた。


「人々は他人のことをあれこれ詮索するのが好きなのです。放っておけばウワサも落ち着きますわ」

「お前ひとりの問題ではない!コルネ公爵家のメンツがかかっているのだぞ!」

「もう、大きな声を出さないで下さいます?耳がおかしくなってしまいますわ」

「だが!」


ルイーズがスッと手を挙げた。


「なんだ?」

「私、そのリリアン様と本日から若手音楽家の支援をすることで協力関係になりましたの。つまらないことを言っている場合じゃありませんわ」

「若手演奏家の支援だと?」

「ええ。リリアン様も大変乗り気で、殿下におねだりされてました。ですから、すぐにでも願いを叶えていただけるでしょう」

「ルイーズ.......」


父と兄に憐れむようなまなざしを向けられた。


「どうしてそんな目で私を見るのです?」

「リリアン姫が願うなら速やかに願いを叶えてもらえると、お前が考えているからだ!」


今度はこちらに向けて父が怒り出した。兄もつられて怒っている。


「もう、怒るのに忙しい方々なんですから..........。私は忙しいのでこれで失礼いたしますわね」


面倒になりそうだと、ルイーズはさっさと自室に戻ったのだった。

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