無音の夜
@TiA-Tech
それが何かはわからない。
私が最近書き始めた、このホラー...なんでしょうか?
これらの短編は全て私の実体験です。
私の記憶の中に強烈にあって、
それが何かは今でもわかりません。
なので、時々ネットに書き込んではその反応頂くことで、そのヒントや同じような体験を探しているのです。
それでは、始めさせて頂きます。
私の家は、私が生まれて少ししてから建てられた新築だった。
木造の家は家鳴りがひどくて、とにかく音がよく響いた。夜中でもミシ、ギィ、と鳴る。
階段、床、ドア……すべてがそれぞれの声を持っていた。
当時、小学校の低学年だった私は、両親と一緒に寝ていた。
川の字になって、オレンジ色の豆電球に照らされる寝室で、静かに眠る。
それが日常だった。
ふと、目が覚めた。
あまりにもなんの脈絡もなく私は覚醒し、体を起こした。
やけに静かだった。いつもなら聞こえるはずの、家の軋む音が一切しなかった。
時計のわずかな音がやけに大きく聞こえた。
それが「おかしい」と思えたのは、たぶん子どもだった私なりの直感だったんだろう。
私の真夜中の起床と連動するようにして目の端で、動くものがあった。
寝室のドア。あの、ギィィ……とけたたましい音を立てるはずの扉が、
音もなく、するすると開いていく。
私は目を逸らさなかった。
妙に鮮明な意識のまま、その暗がりの中で、ドアの向こうを見つめていた。
何かが、入ってきた。
背の高い、それでいて身をかがめるようにして歩く影。
暗がりで服の輪郭はわからなかったが、とにかく真っ黒な服を着ているらしいと言うのは判断できた。
天井に届くほどの大きさなのに、物音一つ立てない。
首の辺りが天井を擦るようにしてそれは寝室の出入口に立った。
天井の板張りをなぞるようにして、ゆっくりとその首は周り、それは私を見て...微笑んだ。
顔が、母だった。
けれど、私は一瞬でそれが母でないと悟った。
あまりにも「作り物の母」だったのだ。
輪郭だけ、笑い方だけ、表面だけが母に似ていた。
その時の私には、怖いと言う感情は全く湧かず、
目の前の何かの顔が母にそっくりと言う衝撃にも似た混乱があり、
ただそれを眺めることしかできなくなっていた。
それは、私に向かって手招き...のような事をしていた。
とてもゆっくりと、何かを誘うような動き、けれど、語りかける声はない。
それはやがて踵を返し、音もなく、ドアの向こうへ戻っていった。
ドアは自動で閉まるかのように、また無音で閉じられた。
そして、何もなかったかのように、私は再び目を閉じ、眠った。
我ながら肝が据わった少年だと思うが、
心境としては違う。
本当に、怖さや邪悪さと言うものを全く感じなかった。
そしてそれが去ったことにより、違和感と言うものも不思議と消えていた。
⸻
数年後、祖父が病で亡くなり、
その後を追うように、祖母が深い鬱病を発症し、自ら命を絶った。
因果関係がある...と思う方もいるだろう。
でも私は不思議とあの何かと祖父母の死には因果はない...と感じている。
あれは一体、何だったのか?
匿名掲示板や心霊の実体験を話す場に投稿したこともあった。
もしかしたらコレをお読みになる方が、調べればその形跡が見当たるかもしれない。
こう言う体験談を投稿する時、自称霊能者の匿名の書き込みは皆口々に好き勝手にあべこべの鑑定や占い結果を書き込むものだが、
この体験談には皆口々に決まって
「それは霊ではない」
「もっと強くて恐ろしい者」
「つれて行かれなくて、よかったですね」
と言うような事をレスとして書き込まれるのだ。
皆、同様に共通項のように、恐ろしい何かだと。
……私はそれでも、あの時見たものに恐怖は感じない、今でも。
おそらく今日、枕元にそれが現れても、ただ混乱があって
眺めるだけだろうと思う。
客観的に見れば私はおかしな人間に思えるだろう。
でも、私のごく少ない体験上の内から言わせて頂くのであれば
本物を見る時、人間は恐怖を感じない
本当はそれが一番怖い事なのかもしれない
無音の夜 @TiA-Tech
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