第21話:チリ地震

 その日、チリで地震が起こったという一報を最初につかんだのはなんと大日本帝国であった。帝国軍は直ちに災害派遣と称してチリ近海への艦隊派遣を表明、発表はまだ25日の夜も明けきらぬ頃のことであった。当初、日本だけが支援表明をしたものの、それすらもチリ硝石を狙ったものではないかと囁かれていた。だが、本当の調査目的は、また別に存在した……。

「大隊長、なんで祖国は我々を派遣したのでしょうか」

「俺に聞くな。人道支援によって点数を稼ぐつもりらしいが、それだったらこんな最新鋭の軍艦ではなく、もう少し別のものを用意するわな」

「ですよねえ……」

 大日本帝国が派遣したのは、新鋭艦のみで構成された二個水雷戦隊とたくさんの支援物資を積んだ輸送船舶およそ十万トンであった。そこに存在したのは、大量の水を始め、豊作時に貯蓄されて飢饉の際に消費された米の残りや多数の自転車など、安価で調達できるものであったが故に点数稼ぎと前線の兵から揶揄されたのだが、中でも変わり種の支援とも言えたのが……。

「……では、教授。ここがこうなっておりまして……」

「ああ、ならば、ここがこうなれば……」

 ……地震学者であった。大日本帝国はこのチリの地震を対岸であるが故に危険な事例であると捉え、チリ人の救助もかねて自国の地震研究の種として扱うことを決めたのだった。


 列強とは、力の論理である。それは、例外なく。だが、それは同時に抑止力となって一国独裁体制を阻止しうる、貴重な自浄能力である。それが無き我々の世界のなんとも喧しく腐敗臭の漂う禍々しきことよ。

 ~読み人知らず

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