第2話:日独防共協定

 1936年11月、日独が防共協定を組んだというニュースはいとも容易くルーズベルトが憤死したというしょうも無いニュースを吹き飛ばした。以後、過去の人として語り継がれることすら無いルーズベルトだが、後にソ連崩壊の立役者となったヒトラーと本来イギリスとの同盟を模索しているはずの大日本帝国が同盟を組んだという事実は、世界を震撼させるに充分すぎた。なぜ、世界は世界の果ての島国が死にかけの東欧と同盟を組んだ事実をそこまで警戒し、同時に恐怖したのか。それは言うまでもなく、ドイツの科学力と日本の軍事力が融合したら、手がつけられなくなるからだ。無論、それだけではない。大日本帝国と大英帝国の外交的実績は有名であったが、本来はそのイギリスの敵であるドイツが日本と手を組んだことは、外交常識を作り替える驚天動地の出来事であった。後に、防共協定である旨が発表された際に一旦沈静化し、同盟関係に発展しなかったことからそこまでの衝撃を世界に与えることは無かったのだが、当時の一面を見ると如何にしてヒトラーが大日本帝国との協定を結んだかの詳細が書かれていることから、日本とドイツの同盟というものが当時どれだけあり得ない出来事であったのかが見て取れる。

 だが、この協定は所詮は防共協定である、諸国は同盟関係になることを警戒したが、最後まで大日本帝国とドイツ第三帝国の同盟関係が構築されることは、無かった。そもそも、大日本帝国が模索する人種平等条約とそれを基とした大東亜宣言はヒトラーの思想とは相容れないものである。故に、地政学的に条件が整ったとしてもむしろそれで防共協定まで行ったことの方が異例ですらあった。

 だが、事態はさらに斜め上に行くことになる……。

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