ー2章ー 7話 「ナツキの決意とスライムの奇跡」
タケトがスライムを迎えに行っている間、ナツキはホノエ村の家畜たちの様子をじっと見つめていた。
干からびた地面、痩せ細った牛や豚。
彼女は歯を食いしばりながら、胸の中で静かに決意を固める。
【ナツキ】「このままじゃダメ……タケトさんが戻るまでに、少しでも立て直さないと……!」
彼女はすぐに村人たちを呼び集めた。
勢いに戸惑う者もいたが、その目の真剣さに応じ、村人たちは次第に動き出した。
【ナツキ】「イモを蒸してください!そのままじゃ家畜には硬すぎて食べられません」
【村人A】「イモ? 食べなかったから、無理かと思ってたが……」
【ナツキ】「蒸すと柔らかくなるし、水を混ぜて裏ごしすれば、食べられるかもしれません。まずは水を飲ませて、胃を慣らしてあげてください」
彼女は手早くイモを蒸し、裏ごし器に向かう。
疲れた身体に鞭を打ちながら、黙々と作業を続けた。
【ナツキ】「……もう少し水で伸ばして……あ、そっちは、裏ごしをしっかりお願い……」
その様子を見た村人たちは感心し、次第に手伝い始めた。
子どもたちまでが手桶を持って水を運び、村に活気が戻りつつあった。
やがて、ペースト状になったイモを牛の口元へ運ぶ。
【ナツキ】「……お願い。食べて……」
牛は一瞬鼻先をひくつかせたあと、ぺろりと舌を出してゆっくりとそれを舐めとった。
そして、もぐもぐと噛み始める。
【ナツキ】「……食べた……!」
その瞬間、ナツキの頬を一筋の涙が流れた。絶望の中に、確かな光が差したのだった。
と、そのとき。
【村人B】「おい!誰か来たぞ!ウルフ車だ!」
土煙を巻き上げながら、タケトがスライムたちを連れて帰ってきた。
【タケト】「戻ったぞー! 青と緑、どっちも元気だ!」
【リュウジ】「ナイスタイミング!よし、行こう!」
リュウジはウルフ車に駆け寄ると、スライムたちを少しだけ残っていた牧草のところへ案内した。
【リュウジ】「お前たち、頼む!この牧草を一気に広げたいんだ!」
青と緑のスライムは元気よく跳ねながら、牧草のそばへ向かう。
【青スライム】「牧草はじめてー。なんだか甘い匂いー」
【緑スライム】「草の中においしそうなエネルギーあるー。いただきまーす」
二匹は夢中になって牧草を食べ始めた。
そして、少しすると体をぐるりと回転させながら、粘液を土壌に撒き始める。
【タケト】「お、来たぞ。ぬちゃぬちゃタイムだ」
ぬるりと広がる粘液。
その効果は割とすぐに現れた。
粘液の染み込んだ地面から、新たな芽がふわりと顔を出し、青々とした牧草がじわじわと村の一角を覆いはじめた。
しかも、緑スライムの影響で一部には薬草も混じっていた。
【村人C】「な、なんだこれ!? 緑が……戻ってきてる……!」
歓声とどよめきが村を包んだ。
ナツキはその様子を見つめながら、小さく呟いた。
【ナツキ】「す……スゴい……。これなら、きっと……」
小さな努力が、確かな結果となって返ってくる。
それを目の当たりにした瞬間だった。
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