ー2章ー 1話 「リュウジ村長爆誕!新たな目標は“米”だった!?」

朝焼けが空をほんのりと赤く染めていた。

小鳥のさえずりが響く、トリア村の静かな朝。

だがその日は、少し様子が違っていた。


 村の広場には、いつになく多くの村人が集まっている。

ざわざわとした空気の中、俺──リュウジは、欠伸を噛み殺しながらその列に加わっていた。


【リュウジ】「珍しく朝っぱらから集会なんて、一体なんなんだよ……」


 昨日の祝賀会の余韻がまだ体に残っている。

酒は控えたつもりだったが、思いのほか効いていたらしく、若干ふらつきながら立っている。


【ユイナ】「ふふっ、今日はね、この村にとって“とっても大切な発表”があるのよ」


【リュウジ】「大切な発表……? まさか、新品種のイモのお披露目会かなんかじゃないよな」


冗談のつもりだったが、ユイナはにっこりと笑うだけ。

逆に不安になってきた。


 しばらくして、前に出てきたのはお馴染みのじいさん──いや、村長である。


【じいさん】「皆の者、静粛に! これより、トリア村の新たな節目を告げようぞ!」


 その言葉に、ざわめきがぴたりと止む。


【じいさん】「この度、トリア村民議会は、満場一致で……リュウジを、新たなトリア村の“村長”として推挙することとした!」


【リュウジ】「……えっ? ええええーーーっ!!」


 一瞬、何を言われたのか分からなかった。俺? 村長?

 気づけば、広場中から拍手と歓声が沸き起こっていた。


【村人A】「お前さんが来てから、村はガラッと変わったんだ」


【村人B】「ドラゴンまで仲間にしちまったんだろ?もう神様みたいなもんだ!」


【村人C】「スライムと農業を両立する変なやつ、他にいねぇしな!」


【リュウジ】「いやいやいやいや! 俺、そんなことするつもりなかったし! てか、両立って何!?」


 引きつった笑みを浮かべながらも、逃げ場はなかった。

気づけば、タケトやユイナ、そしてクラウガたちまでもが微笑んでいる。


【タケト】「ま、それだけの事をしたってことだ。それに、こんな荒れ果てた土地を緑豊かにしたんだ。普通できないぜ?村長さん!」


【リュウジ】「ちょっっと待て!なぁ、民主的に行こうぜ?………当然、俺に拒否権は?」


【全員】「なーーーし!」


 ……結果。

俺、トリア村の新・村長になりました。


 ただし実務のほとんどは、相変わらずじいさんと有能な村人たちがこなしてくれているので、俺はほぼ名誉職みたいなものだ。


 そんな“なんちゃって村長”初日の午後、村を回っていた俺にタケトがふと話しかけてきた。


【タケト】「そういやさ、ミズハ村の畑……まだ水に浸かってるよな?」


【リュウジ】「ああ、川の氾濫のせいでな。水はきれいだけど、あのままじゃ畑にはできないな」


 タケトはしばらく何かを考え込むように黙った後、ぽつりと呟いた。


【タケト】「……逆に、あれ“田んぼ”として使えるんじゃないか?」


【リュウジ】「田んぼ……って、米!?」


 一瞬で目が覚めた。

脳内に白く輝く炊き立ての米がよぎる。

イモもいいけど、米は別格だ。


【リュウジ】「田んぼ……それ、ありかも!」


 興奮した俺は、ある言葉を思い出した。

 数日前、ガンジが何気なく話していたあの一言。


【ガンジ】「昔な、北西の方に“米を作ってた村”があるって話を聞いたことがあるぞ」


何気なく聞いていたその言葉をふと思い出したのだ。


【リュウジ】「タケト!ミズハ村北西の村だ……! きっとそこに、ヒントがあるはず!」


 タケトと顔を見合わせた瞬間、お互いの中で何かが決まった。


【リュウジ】「行ってみるか。新たな冒険だ!」


 米を求めて、俺たちはまた一歩、生活基盤を整える旅へと踏み出すのだった。


そう、日本の心を取り戻す旅へと………。

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