第25話 女心はやっぱり難解だ
「めっちゃ美味しかったね!」
噂のパン屋でモーニングを堪能した琴平舞衣はご機嫌だった。しかしそうなるのも分かる。
モーニングが思ったより美味しかったからだろうな。俺もまた来たいと思うくらいパンが美味しかったのだ。今度はパンだけを買いに来るのもありかもな。そんな事を考えていると
「それで何処の本屋さんに行くの?」
琴平舞衣がこの後の予定を聞いてくる。
「そうだな、少し行くと商店街があるからそこの本屋を見て回ろうか」
「おぉ!なんか本屋巡りっぽいね!」
取り敢えずこれからの予定を伝えたのだが何やらテンションが上がったようだ。まぁ楽しそうにしてもらえるに越したことはないが、それにしても本屋巡りっぽいって何だよ。
本屋巡りって言ってるだろ!ほんとたまにポンコツみたいな事を言い出すよな。
俺の横で鼻歌を歌いながら歩いている琴平舞衣を見ながら呆れてしまう。
「この辺はよく来るの?」
「たまにな。本屋以外にも商店街の中に色々あるから意外と楽しめる」
「なにそれ!めっちゃ楽しみなんだけど!」
どうやらあまりここら辺には来ないようだ。
そういえば彼女の最寄り駅はここから3駅先だったよな。あそこは駅前が結構栄えてて大きな商業施設もあるから確かにこの辺に来る事もないか。
「あとはカフェが多いのもポイント高い」
「いいねいいね!」
「だろ?歩き疲れたらすぐに入れるからな」
「最高じゃん!」
そんな琴平舞衣にこの辺りのおすすめポイントを伝えたのだがどうやら気に入ったようだ。
いつもより本屋に行く件数を減らした方が良いかもしれないな。俺はそんな風に今日の予定を改めて考えるのだった。
「何かちゃんと見ると本屋さんてそれぞれに特色があって面白いね!」
「だろ?客層とか地域柄とか出るからな」
「うん!1軒目は漫画とか週刊誌が多かったのに2軒目は絵本とかが多かったし」
「だな。同じ商店街にあるからこそ店ごとに特色を出してるのかもな」
「あ〜確かにおんなじ様な品揃えだと片方でいいやってなるもんね」
「そういう事だな」
「色々考えてるんだねぇ」
琴平舞衣は感心した様に言うと手に持っていたフォークをケーキに突き刺した。
あれから俺達は3店舗ほど見て回ってから商店街の中にある喫茶店で休憩を取っている。
最初は2店舗を見たら休憩するつもりだったのだが、思いのほか楽しそうにしていたので予定通り3店舗見て回ったのだ。
それにしてもモーニングを食べた後でよく食べれるよな。目の前で美味しそうにケーキを頬張る琴平舞衣を見て俺は若干引き気味だ。
いくら歩いたと言ってもまだ2時間も経っていないのだ。これだけ食べるならあれだけ腹が鳴るのも頷ける。
「ねぇ?何か失礼なこと考えてるでしょ!」
琴平舞衣はフォークを片手にジト目で俺の方をみてくる。何で分かるんだよ!てかそのフォークが怖いんだが!俺は慌てて取り繕う。
「そんなこと考えるわけないだろ」
「ほんとにぃ?」
しかし疑いの目を向けてくるのはやめないので俺は話題を変える事にした。
「昼ご飯は何が食べたい?」
「すぐご飯の話をするのはマイナスだよ!」
どうやら悪手だったようだ。マイナスを頂いてしまった。
「善通寺くんは私の事を食いしん坊だと思うのをやめた方が良いと思うんだよね!」
「思ってない!思ってないから!」
「い〜や!思ってるね!」
「だったらお昼ご飯はいらないか?」
「いるよ!いるに決まってるでしょ!」
俺の問いかけに琴平舞衣は食い気味に被せて来た。なんだよいるのかよ!
食いしん坊って言うなとか、ご飯の話をするなとか言ってたんじゃないのかよ。
「あのねもうちょっと女心を考えてよ」
「女心ねぇ?」
「そうだよ!ご飯は食べたいけどそれを言われるのは恥ずかしいんだよ!」
どうやら女心はとても難しいみたいだ。
俺には難解すぎて理解出来そうにない。
「何か言いたそうだけど?」
「いや言いたい事は分かるけどさ」
「分かるけど?」
「別に恥ずかしがる事じゃ無いと思うんだよ。ご飯は好きな物を好きなだけ美味しそうに食べる方が良いと思うんだよな」
ほんと俺はそう思うのだ。一緒にご飯を食べるなら美味しそうにモリモリ食べる方が見ていて気持ちがいい。わざと少食ぶるヤツなんかと食べたいとは思わないからな。
「そ、そうなんだ。ふーん」
俺が自分の考えに納得していると琴平舞衣が何やらモジモジしている。具体的には指先で髪の毛をクルクルしているのだ。
「どうした?何かあったのか?」
「べ、別に!何でもないよ!」
「ならいいけど」
「それよりお昼何食べるか決めようよ!」
気になったので聞いてみたのだが何でもないと言われてしまった。それどころかお昼に何を食べようか決めようと言い出したのだ。
さっきご飯の話を出すなと言われた所なのに何て理不尽なのだろうか。
なるほど!これが女心というやなんだろう。
それならやっぱり俺には難解である。
俺の目の前でニコニコしている琴平舞衣を見て改めてそう思うのだった。
=====================
新作になります。
完結目指して頑張ります。
ブックマーク、いいね、コメントしてもらえると嬉しいです。
宜しくお願いします!
=====================
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます