第9話 ギャルってコミュ力高いよね
琴平舞衣というクラスどころか学年でも1番イケてる女子と話すようになって早いもので1週間が過ぎようとしていたが、特に変わったことなどはなく俺は平穏な学校生活を過ごす事が出来ている。
「昨日のドラマ見た?」
「見たけどあの展開、私はあんまり好きじゃなかったかな」
「え〜?舞衣はどうだった?」
「ごめん!ドラマ見てないんだよね」
「まじか!めっちゃ面白いから絶対見て!」
それは琴平舞衣も同じようで今も友人達と楽しそうに話をしている。友人の中に坂出さんもいるので例の件は今のところ問題ないようだ。
ちなみに会話が丸聞こえなのは俺と彼女の席が近いからで、決して聞き耳を立てているわけではない。
「そいいや大屋冨たちはどこ行ったの?」
「今日は食堂で食べるんだって」
「へぇ〜!」
どうやら話に聞いていた通りイケてるグループはいつも一緒にいるわけではないようだ。
この辺の話は前に琴平舞衣に教えてもらった。
基本的には男子と女子のグループに分かれているのだが、大屋冨と坂出さんの2人は幼馴染みで一緒にいることが多く結果的に1つのグループに見えるらしい。それを聞いた俺は
「結局は同じグループなのでは?」
そう言ったのだが琴平舞衣はそれを否定した。
あくまで自分が所属しているのは女子のグループなのだと言い張るのだ。正直どっちでもよかったので俺はそれ以上何も言わなかった。
そういう訳で今は女子のグループだけが教室に残っているというわけだ。琴平舞衣と坂出さんと派手目のギャルの3人である。
いつもは4人で一緒にいると言っていたがどうやら今は1人いないらしい。
自分が所属してもいないグループの事にどんどん詳しくなっているのは何だか悲しくなるが、琴平舞衣に協力するのに必要な情報だと割り切ることにした。
「そういや姫華ってお弁当自分で作ってるんだよね?」
俺が色々考えているうちにギャルが何やら聞いた事のある話題を話し始めた。あまりにもタイムリー過ぎて俺は思わず聞き耳を立てる。
「そうね。自分で作ってる」
「へぇ!すごいじゃん!ウチ料理とか出来ないから尊敬するし!」
「そんな大したものじゃないわよ。両親が忙しいから私が代わりにやってるだけだし」
普段から料理をしているんだな。クールな印象が強かったが意外と家庭的みたいだ。
「大屋冨とかにも作ったりすんの?」
「な、なんで光秀が出てくるのよ!」
おお!さすがギャル!ぶっこむじゃないか!
いいぞ!もっとやれ!
「だって幼馴染みでしょ?幼馴染みなら料理作りに行ったりしないの?」
「するわけないでしょ!漫画の読みすぎよ!」
どうやら普段から頻繁に行き来しているわけでは無さそうだ。まぁそんなラノベや漫画みたいな事はそうそうないか。それにしても普段はクールな坂出さんがあれだけ慌てているのを見ると琴平舞衣が言っていた通り大屋冨の事を好きなのは間違いないみたいだ。
最悪勘違いもあるんじゃないかと思っていたので謝らないとな。そう思い琴平舞衣の方に目をやって俺は固まってしまった。
なんでかって?だってめっちゃソワソワしてるんだもん!何かチラチラと坂出さんの方を見ているが明らかに見過ぎである。何だか嫌な予感がする!そう思った時には手遅れだった。
「あ、あの!」
琴平舞衣は意を決したのかのように声をかけたのだが、急に大きな声を出したから坂出さんもギャルも驚いてるじゃねぇか!
「ど、どうしたの?」
「いや、姫華は大屋冨くんにお弁当とか作らないのかなって」
やっぱりそれを言いたかったんだな。俺の予想はバッチリ当たった。まぁこんなの10人いたら10人ともが当てれそうなもんだけど。
「そうだよ!せっかくなんだし大屋冨に作ればいいじゃん!」
「うん!私もそう思う!」
明らかにおかしな流れだったけどギャルのお陰で持ち直したようだ。
「そんなの出来るわけないよ」
「なんで?」
「だっていきなりお弁当作ってくるとかおかしいでしょ?」
「そんなことないっしょ!」
「私もそう思う!」
「でも……」
ギャルがグイグイいくお陰で話はどんどん良い方に進んでる気がする。坂出さんは聞いていた通り恋愛面ではかなり奥手で自分に自信がないようだ。ほんと『おさこい』の主人公にそっくりじゃないか。
それにしても琴平舞衣よ!お前はさっきから、「私もそう思う」しか言ってねぇぞ!お前が切り出した話題だろうが!もうちょいマシな切り返しをしろよ!
「ほら!私の事はいいからさ!」
「え〜お弁当作ろうよ!」
「作らないから!この話はおしまい!」
そう言って坂出さんは弁当箱を片付けるとトイレに行くと言って教室を出ていってしまった。どうやらここまでのようだ。しかし思いがけず良い情報を得ること事が出来た。
やっぱりギャルはコミュ力高いなぁ!
俺が今日のMVPに感心しているとポケットの中でスマホが震えるのを感じた。
ポケットからスマホを取り出して確認するとメッセージが届いていた。
『めっちゃ話聞いてたでしょ?』
琴平舞衣からだ。どうやら俺が聞き耳を立てていたのに気付いたらしい。何て返そうかと思っていると続けてメッセージが送られてきた。
『私、結構頑張ってなかった?』
さっきの頑張りを褒めて欲しいようだ。
でもなぁ「そう思う」しか言ってなかったのに何を褒めればいいんだろうか?
『なんで既読無視するの?』
何やらジト目をした猫のスタンプも一緒に送られてきた。仕方ないから俺はメッセージを打ち込んで送信した。
「なっ!」
「舞衣どうしたの?」
「な、なんでもないよ」
琴平舞衣とギャルのやり取りが聞こえてきた。
恐らく俺のメッセージを見たんだろうな。
その証拠に俺のスマホがめっちゃ震えている。
仕方ないのでメッセージを確認する。
『良い相槌だったと思うぞ』
『良い相槌って何よ!』
『頑張ってたでしょ!』
『ねぇ?』
『何で無視するの!』
『ねぇってば!』
そしてジト目猫のスタンプが連打されてきた。
それを見て俺は思わずため息をつく。
こんなのもはやテロじゃねぇか。
仕方ないので俺はもう一度だけメッセージを送ってスマホをポケットにしまうのだった。
ほんと世話のかかるやつである。
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新作になります。
完結目指して頑張ります。
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宜しくお願いします!
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