〖3〗合法ロリっ子旦那と高身長ハイスペック夫
今、
重い沈黙の中、次男の
「ヤム……もう、いいよな? この部屋に、入っても……」
きょうだい皆、捌夢に気を使って漆雅の部屋には入らなかった。
翔伍の次に口を開いたのは、長男、
「シチが死んで53日経った。そろそろ……」
他のきょうだいも、捌夢を心配そうに見ている。
その気遣いにほんの少しの罪悪感を覚えた捌夢は、覚悟を決め、コクリと頷く。
そして参彦が、漆雅の部屋の、ドアを開けた。
・・✾_✿❀_✾・・
漆雅の部屋は、三男である
だが陸斗は寮生で、漆雅は実質一人部屋のようなものだった。
陸斗のベッドも今は漆雅の物置同然で、寝るときだけ床に落とす。
この家は、二人一部屋が当たり前。
漆雅が一人部屋である事に、不満を持ったのは捌夢も例外ではなかったが、漆雅の部屋に別の誰かが来て二人部屋になったとしても、別の一人が一人部屋になってしまう、という事で結局何も変わらなかった。
「………………意外と、普通ね」
次女の
それに対しては全員同意見だった。
勉強机があり、電気スタンドがあって、そこには広げられた教科書とノート、筆記用具がある。
壁には白鳳中高の制服と予定の書かれたカレンダー、暖色系の時計がかけられている。
本棚には綺麗に入れられた漫画と、少々無作法に入れられた教科書。それと日記と思われるノートも。
この部屋に、陸斗の机はない。陸斗の持ち物で言えば、本棚や数えられる程度しかきてない服。綺麗に保存されている小学校のランドセルやノート、アルバムのみ。
二段ベッドの上段には漫画とスマホ、下段に学校のカバンや辞書など。
まるでこの部屋だけ、時間が止まってるようだった。
何も変わらない。兄が死んだあの日から。
「さあさ、ついでに始めましょうか」
そう言って部屋の窓に歩み寄ったのは、長女、
「始めるって、何を?」
「何言ってる」
首をかしげる翔伍の隣を、陸斗が歩く。
陸斗は振り返って言う。その後ろには、窓から挿す光を浴びる壱歌がいた。
「桜の花言葉、『私を忘れないで』の意味を調べるついでに、遺品整理だよ」
・・✾_✿❀_✾・・
漆雅の部屋の遺品整理を始めて早十分。翔伍が悲鳴を上げた。
「ああーーだるい! サボりたいぃぃぃ!!」
「うるさい! そんな事言ってないで手を動かせショウゴ!」
「そうよそうよ。あ、折り紙の
「ええー漆雅くんこんなもの作るのぉ?」
壱歌がクローゼットの中から折り紙の手裏剣を手に持った時、その後ろににゅっと萌え袖の人影が現れた。
皆バッと振り返り、声を主を見る。
「そ、そうちゃん!」
三女、
なぜなら、声の主は肆音の旦那、桜井
「どーもぉー。身長162センチ、なぜか服のサイズが合わなくて萌え袖になっちゃうもうすぐ19歳の、童顔ロリ顔男子、桜井そーまです! ただいまシオちゃん、頼まれてた猫グッツ買ってきたよ~」
ゆったりとした喋り方の合法(?)ロリ男子はウインクをして、後ろに立ってたもう一人の男、弐那の旦那を指さした。
「……猫、お名前決まりましたか?」
どうも、と小さく頭を下げて買ってきた物が入ってるであろう袋を差し出した。
身長184センチ、23歳、ハイスペック男子のこの男が、弐那の旦那、
捌夢が意外と遅く帰ってきた陽輝と蒼真を眺めていると、蒼真が目を潤ませて肆音に抱き着いた。
「うえーんシオちゃん聞いてよぉーー!!」
「な、何何どうしたの?」
「あのね? 猫グッツ買ったついでにね、陽輝のご実家が近かったから寄って行ったの。そしたらね、陽輝のおかーさん面白いんだよ? ボクを見た開口一番が『浮気!?』だよぉ……?」
涙目だった蒼真の目に黒い光が宿る。
肆音は苦笑いしながら蒼真の背中をトントンとたたく。
「そ、それで? どうしたの?」
「うー。ボク既婚者ですよって言ったの。そしたら開口二番『不倫!?』だったのぉ……」
「ちゃんと説明しようねそうちゃん。ただでさえ脳がバグる声してるんだから」
蒼真はチワワのように肆音を見上げる。
実は、蒼真のその動作は日常茶飯事すぎて、きょうだいの中で彼のあだ名は『ぷるぷるチワワ』だった。
そこで声を出したのは壱歌。気まずそうに目をそらしていた。
「実は、猫の名前決まってないのよ。犬たちと同じように花の名前にしようと思ったんだけど、花言葉が……」
「シチの名づけセンス絶望的だった……」
遅れて声をあげたのは翔伍。
きょうだいの異変に気付いたのか、陽輝は眉をひそめた。
蒼真は肆音から離れ、眉を下げ、気まずげに目をそらした。
「ああ……あの子、漆雅くんね……」
彼の珍しい態度に疑問を抱いたのは、妻である肆音だけではないだろう。
その時、漆雅の机周りの整理をしていた陸斗が声をあげた。
「ん?」
――ガタッ
小さな音だったが、一瞬でそこに注目が集まったのは確かだった。
陸斗は漆雅の机にある引き出しに手をかけていたが、その状態でフリーズしていた。
「ここ……鍵がかかってる」
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