第15話 僕にできる事
叔父さんに送ってもらって家に帰ってきた。
円花さんは戻っていなかった。まだ自分の過去を探して歩いているんだろうか。
もう日は落ち、夜になっている。探しに行った方がいいのかなと考えたところで、これからが幽霊の活動時間だと気がついた。
肉体がないんだから、心配するような事もないだろう。僕はシャワーを浴びて、自室に上がる。
帰宅した時、家の中は真っ暗だった。美容室も二階も。
自営業だから、母親はいつも家にいた。小学校に上がる前に父親が家を出て行き、母さんとずっと二人だった。だけど、寂しいと思ったことはなかった。
子どもの頃は、店奥で宿題をやったり、ゲームをやったり。お客さんと会話をしながら施術をする母さんを見てきた。
母さんはいつも明るく元気で、笑いながら僕を構ってくる。その元気さを煩わしく感じた頃もあったけど、反抗期を過ぎると、僕を見守ってくれていたんだと気がつけた。
高校生になると、あまり構われなくなった。自然に距離が開いていって、今は適度な距離感を持って生活をしている。
親離れ子離れを、うっすらと感じていた。
でも僕はまだ母親に全力でおぶさっている。食事の支度も、風呂の準備も、家の掃除も、僕はしたことがない。自室だけは中学校時に入るなと言ってから自分でやるようになったけど。
甘えすぎてたな。
疲れた体をベッドに横たえ、僕は反省していた。
美容室は手伝えないけど、家のことはやろうと思えばできたはずだった。それなのに、やろうと思わなかった。
部活に入らず、勉強にも熱心でなくて。だらだらと動画を見て、ボカロ曲を聴いて、生産性のない毎日を過ごしていた。
母さんは毎日何時間も店で仕事をしながら、家事をしてくれていた。知っていたのに、母さんがやってくれるから、甘えていた。
明日、母さんは退院予定。
帰ってきたら、僕に何ができるんだろう。
何をしてあげると、母さんは楽になるんだろう。
してあげる? なんて押しつけがましい考え方だ。僕はだめな奴だなあ。
何ができるのかわからないけど、少しでも母さんの負担をなくせればなあ。
考えているうちに僕の意識は落ちていく。
帰り際に聞いたことを詳しく教えてもらおうと、叔父さんにメールをするつもりだったのに、僕は眠りに落ちた。
次回⇒16話 少しの違和感
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます