第11話 霊感体質になったきっかけ
僕は幽霊が見える体質だ。
でも、生まれた時から見えていたわけじゃない。あの出来事がきっかけで、見える体質になった。
幼かった僕は、特別な力が覚醒したんだ、とうきうきして喜んだ。
道で会った帰るお家を探していると訴える幽霊を交番に連れて行ったり(お巡りさんはとても困っていた)、一緒に遊びたいと言う子どもの幽霊と公園で遊んだり(数日後にその子は来なくなった)。
僕には幽霊を助ける力があるんだと、本気で思っていた。
その頃、幼稚園で読んでもらった絵本が、人を思いやる話と、お化けが出てくる話だったから、くっついていたんだと思う。
当時の僕は、人との距離がほとんどない子どもだった。誰とでも仲良くなれたし、間を取り持ったりケンカの仲裁もできた。先生に対しても、躊躇いなく話していて、子どもながらにコミュ力が高かった。
突然、特別な能力が開花して、すげえーとなっていた僕は、クラスメイトたちに話した。
興奮していた僕は、友だちの様子に全然気づかなかった。
話し終えてから、思っていた反応がもらえないことにおかしいなとようやく思い至り、友だちが薄気味悪そうにしているのに、気がついた。
ある子はバカにするように笑い、ある子は怖がり、ある子には嘘つきと言われた。
すげえと言ってもらえるものだと思い込んでいたから、その反応にかなりのショックを受けた。
話した日は遠巻きにされ、一緒に遊んでもらえなかった。
それは、一日で終わらなかった。
毎日一緒に遊んでいたのに、避けられ仲間外れにされ、僕は教室でも園庭でもひとりぼっちになった。
仲間に入れてと声をかけると、嘘つきと遊んじゃいけないんだと言い返された。
見かねた先生が園児たちに声をかけてくれて、しぶしぶ仲間に入れてもらってもよそよそしくて、以前のようには遊んでもらえなかった。
そして僕は口を閉ざすと同時に、心も閉ざした。
先生と僕から事の顛末を聞いた母さんから(両親はもう離婚していた)転園を進められて、僕は別の幼稚園に移った。
新しい幼稚園で何も知らない園児たちは、僕に興味を持って声をかけてくれたけど、以前の僕には戻らなかった。
人を無条件で受け入れていた僕は、わずか6歳にして人は裏切るということを知り、他人と距離を取るようになった。
10年経った今も、変わらずにそう思っている。
「そんな理由があったから、私がカッコイイ能力って言った時、怒っちゃったんだね。つらい経験だったね」
幼稚園が見えない場所でうずくまる。僕の話を、円花さんも隣に座って聞いていた。
「だから、あの幼稚園は見たくない場所なんだ。円花さんは‥‥‥あの幼稚園に通ってたの?」
「一時だけ。すぐに別の幼稚園に移ったの」
「そっか、僕も一年ちょっと通ってて、年中の途中で転園したんだ。もしかしたら、すれ違ってたかもしれないね」
「かもしれないね。ねえ、話せたらでいいんだけど、その力が開花したきっかけ、教えてもらえたりできる?」
「あ‥‥‥うん」
僕は乾いた唇を舐めて湿らせてから、口を開いた。
「女の子を助けたんだ」
「知ってる子?」
「ううん。知らない子。でもあの幼稚園の園児」
すべり台の近くで遊んでいた僕は、小さな女の子がすべり台の上にいるのを見つけた。女の子はすべるのが怖いのか、躊躇っているようにみえた。
その時、背後からやってきた体の大きな男の子が、「どけよ!」と怒鳴りつけた。
女の子はびくりと体を震わせた。怖くて動けないのか、その場から動かない。
男の子はイライラした様子でもう一度「どけって言ってんだろ!」と威嚇し、そして、女の子を突き飛ばした。
バランスを崩した女の子は、すべり台の横から落ちた。
すべてを見ていた僕は、とっさに女の子を受け止めようと動いた。
でも受け止めきれず、女の子の下敷きになって転び、頭を打った。
気を失い、病院で目覚めた時、漂う幽霊たちが見えた。
初めはお化けだとわからなかったけど、人と違う存在だということは、すぐに気がついた。透けていたから。
怖さよりも、好奇心の方が勝っていた。僕がそうだから、みんなそうだと思い込んでいた。だから、浮かれて話してしまい、気味悪がられた。
次回⇒12話 円花さんの言葉
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