彼女に興味のない俺を彼女は惚れさせたい‼︎

ks1333

第1話:告白

──才色兼備。

 誰もが一度は聞いたことのある言葉だろう。優れた才能や知性と美しい容姿の両方を兼ね備えている人のことを一般的のそう呼ぶ。


 俺の学校にもそう呼ばれている奴がいる。名前は白川七海。この学校において勉強でも運動でも彼女に勝る者はいない。


 それに加え、容姿も絶世の美女と称されるほどにかわいい──らしい。


 俺は他人に興味がないので今話したことも全部周りが言っているただの噂なのだが...。


 問題はそんな彼女に何故俺が校舎裏に呼び出されているか...だ。


 今日の朝、いつも通りに学校に登校して来たら、俺の下駄箱に一通の手紙が入っていた。そこには、


 『伝えたい事があるので今日の放課後、校舎裏に来てください』


 と書かれていたのだ。俺のようなほぼ誰とも関わっていないような奴に手紙を出す奴はいないだろうと思っていた。


 だが、封筒の端に小さく俺の名前──黒川怜人と書いてあったため、出す相手を間違えたという選択肢は消えた。


 そこで俺はその名前を見つけた。──白川七海。彼女と俺にはなんの接点もない。これ

でこの手紙が悪戯であろうことが確定した。

 

 にも関わらず俺がわざわざ校舎裏まで来たのは、わざわざ人の名前を使ってまで悪戯をするなと言いに来たのだ。


 俺に迷惑をかけるのならまだいい。だが、関係のない他人を使ってまで悪戯をするのは違うだろう。ついでにこの悪戯もやめてもらえそうならやめてもらおう。そんな事を考えながら校舎裏で待っていると...


「ごめんなさい、待たせちゃったかしら。少し生徒会の仕事が長引いちゃって...」


 とそんな声と共に俺の目の前にこの高校の生徒会長──白川七海が現れた。


 俺はてっきり悪戯かと思っていたので本当に白川七海が現れたことに驚いた。つまりこの手紙は白川七海本人が置いたってことか?

 

 そんな事を思っていると彼女──白川七海は俺の方へと近づいてくる。


「来てくれてよかった」


 微笑を浮かべ、そう告げる彼女の顔は周りの生徒が言うように可愛かった。


「えーっと、ひとつ聞いてもいいか?」


 未だに混乱してる頭でなんとか俺はその言葉を絞り出した。


「なにかしら?」


「この手紙ってお前が入れたものなのか?」


 そう言って俺は今朝、自分の下駄箱に入っていた手紙を白川七海に見せる。


「ええ、そうよ。私が入れたもので合ってるわ」


「どうしてこんな事を?」


 それは純粋な疑問。さっきも言ったように俺と彼女には接点が何もない。それこそ廊下ですれ違ったことはあれど、喋ったことなど一切ないはずだ。


 それに、彼女はこの学校で一目置かれている存在。そんな人物がなぜこんな平凡な人間を呼び出したのか、それが分からない。


「それはね...」

 

 そう言って彼女は更に一歩俺の方へと近づいてくる。そして少し恥じらいながらも......言った......。


「貴方のことが......好きだから」


「……え?」


 間の抜けた声が自分の口から漏れた。


 好き? 俺のことを? こいつが?


 もう一度整理しよう。白川七海。学年一の才女。容姿端麗。運動も学業も完璧で、生徒会長。そんな彼女が──俺のことを「好き」?


 いやいやいや、あり得ないだろ。なんかのドッキリか?どこかにカメラでも仕込まれてるんじゃないか?


 だが、彼女の顔は真剣そのものでとても騙しているようには見えなかった。


「本気...で言ってるのか?」


「......えぇ、私は本気よ。そ、それで返事を聞いてもいいかしら?」


「断る」


「......ふぇ?」


 まさか断られるとは思ってなかったのか彼女は唖然としていた。


 そんな彼女を横目に俺は彼女の横を通り過ぎる。彼女とすれ違った時に俺は、


「じゃぁな」


 と一言だけ言い残し帰るのだった......。

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