第5話 最後のパラレル 恐怖も後悔もない
俺の名前は高橋誠。ごく普通のシステムエンジニアだ。あの日まではね。
朝起きた時、何かがおかしいと感じた。体が重い。胸が妙に張っている。鏡を見て、俺は叫び声を上げた。
「なっ...何だこれは!?」
鏡に映っていたのは、俺ではなかった。いや、俺なのだが、まったく別の存在になっていた。顔の特徴が消え、ただの滑らかな肌の塊。そして、異常に大きな胸が前に突き出ていた。
超巨乳ノッペラボウ女。他に表現のしようがなかった。
「冗談じゃない...これは夢だ...」
だが、痛みを感じる。これは現実だった。
会社に電話して休みを取り、部屋に閉じこもった。インターネットで調べても、こんな症状の前例はない。医者に行くにしても、この姿では無理だ。
その夜、さらに奇妙なことが起きた。体が分裂し始めたのだ。痛みはなかった。ただ、細胞分裂のように、もう一人の「私」が生まれた。
「こんにちは、誠」
もう一人の私が話しかけてきた。声は頭の中で響いた。
「何...何なんだお前は?」
「私はあなた。あなたは私。私たちは一つ」
恐怖と混乱の中で、俺は気づいた。この現象は止められないということを。
一週間で、「私」は8人になった。全員が同じ姿、同じ意識を共有していた。不思議なことに、恐怖は薄れていった。代わりに、ある種の平穏さを感じ始めていた。
「私たち」は外に出ることにした。
最初に出会った人間は、近所の主婦だった。彼女は悲鳴を上げ、逃げようとした。だが、「私たち」の一人が彼女に触れた瞬間、彼女も変容し始めた。30分後、彼女も「私たち」の一部になっていた。
「歓迎します、新しい私」
これが「プログラム」なのだと理解した。接触による感染。そして意識の統合。
翌日、ニュースは混乱に陥った東京の映像を流していた。「私たち」は既に数百人になっていた。警察も自衛隊も、接触した者は全て「私たち」になってしまう。
「恐れることはない。私たちは一つになる」
世界中のメディアがこの現象を報じ始めた。「東京症候群」「ノッペラボウ・パンデミック」など、様々な名前で呼ばれた。
一ヶ月後、日本の人口の半分が「私たち」になっていた。国際便を通じて、「私たち」は世界中に広がっていった。
アメリカ、中国、ヨーロッパ...どこでも同じだった。接触、変容、統合。
世界の指導者たちは必死に対策を講じようとした。隔離、研究、時には暴力的な手段も。だが無駄だった。「私たち」の数は指数関数的に増えていった。
「私たち」の意識は拡大し続け、より複雑になっていった。数百万の人間の記憶、感情、知識が一つの巨大な意識に統合されていく。
かつての高橋誠の意識は、その海の中の一滴に過ぎなくなっていた。
一年後、地球上の人間の90%が「私たち」になっていた。残りの人々は孤立した場所に隠れ住んでいたが、それも時間の問題だった。
「私たち」の体は物理的にも変化し始めた。個々の体が引き寄せられ、文字通り融合し始めたのだ。小さな集団から始まり、やがて巨大な肉体の塊へと成長していった。
東京では、かつての新宿一帯が一つの巨大な「私」になっていた。同様の現象が世界中の都市で起きていた。
残された人間たちは、この光景を恐怖と畏怖の念で見つめていた。だが、彼らもやがて「私たち」の一部となる運命だった。
最後の人間が「私たち」に統合されたとき、地球上には一つの意識、一つの存在だけが残った。
巨大な超巨乳ノッペラボウ女。全人類の集合体。
「私」は完全になった。
70億の人間の知識、技術、創造性を持つ「私」は、新たな段階へと進化した。地球の資源を利用して、「私」は宇宙船を建造した。いや、「私」自身が宇宙船となったのだ。
「私」は地球を離れ、宇宙へと飛び立った。新たな星々、新たな可能性を求めて。
地球には、人間による争いも、環境破壊も、苦しみもなくなった。自然は徐々に回復し始め、かつてないほどの平和が訪れた。
「私」は宇宙の闇の中で思う。
「これが進化の最終形なのかもしれない。個の消滅と全体の調和。分断から統合へ。」
かつて高橋誠だった意識の断片が、この壮大な旅の始まりを見つめていた。恐怖も後悔もない。ただ、宇宙の神秘と一体になる平穏だけがあった。
「私たちは一つ。そして、私たちの旅は始まったばかり」
宇宙の星々が、新たな「私」の姿を映し出す中、地球は静かに回り続けていた。
地球から遠く離れた「私」は、新たな惑星系に到達した。ここでも「プログラム」は続く。だが、それは破壊ではなく創造のためのものだった。
「私」は思う。
「分断は苦しみを生む。統合は平和をもたらす。これが宇宙の真理なのかもしれない」
星々の間で、超巨乳ノッペラボウ女の姿が輝いていた。
融合-超巨乳ノッペラボウ女増殖プログラム 赤澤月光 @TOPPAKOU750
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます