第41話「最終戦争!恋マスター協会軍VS愛の《PIЯI PIЯI》連合軍(後編)」
【緊急生中継:遊園地で異星間戦争勃発か】
——第40話の終盤、タバスコ夫人のカオス弾炸裂の直前の出来事
実況アナウンサー(スタジオ):
「お伝えしています、練馬区の遊園地『星空ワンダーランド』上空です。午後3時過ぎから、未確認の飛行物体と、謎の装甲車部隊の大規模な戦闘が続いています。情報によると遊園地はある瞬間からジャングルのような森に姿を変え、レーザー光線が飛び交う異世界のような戦場に化しているとのことです。現在、特殊部隊を含む自衛隊が出動し、遊園地周辺を封鎖していますが、内部の状況は依然として混乱しています。」
戦場カメラマン(遊園地内・ラブジャスティス兵の密集地帯に潜伏中):
「こちらは現在、バジリコの森内部です!先ほどから、正体不明の二足歩行兵器と、それに立ち向かう謎の民間人、そして別の異形な武装集団が激しく交戦しています。見てください、あの巨大なピンク色のバリアの輝き!そして、あの民間人らしき男性は、なぜか包丁型の刀を振るい、敵のレーザー光線を次々と打ち払っています!」
実況アナウンサー(スタジオ):
「何とも理解不能な状況ですが、カメラマンの山田さん、そちらの武装集団の方に、所属などを聞くことは可能でしょうか?」
戦場カメラマン(山田):
「はい、やってみます!……そこの、ウサギ型の耳付きのヘルメットをかぶった兵隊さん!あなた方はどこの軍隊ですか!?」
(カメラが、カナメ達への攻撃を準備する、真面目な顔のラブジャスティス兵を捉える)
ラブジャスティス兵(真面目な声):
「我々は『恋マスター協会』のラブジャスティス兵だ! 詳細は守秘義務にあたる! それよりも、あのピンクのバリアの中にいる、地球人男性と、契約を破った女が、我々の絶対的な愛の秩序を乱している! あいつらを捕らえるのを手伝ってくれ!」
戦場カメラマン(山田):
「ええと、彼らが違反者……? 契約とは何でしょうか? あの少年を地球人と呼んだと言うことはあなた方はやはり宇宙人なのですね?そして、そちらの巨大な装甲車は何ですか!?」
(山田カメラマンが、タバスコ夫人のポップコーン装甲車を捉える。装甲車の砲台がこちらに向き、カオスな物体を装填しているのが見える。)
戦場カメラマン(山田):
「……あ、あの装甲車から、何かを撃とうとしています!これは明らかに、通常兵器ではない……ええと、ポップコーンのような物体が、装填されて……」
タバスコ夫人(装甲車から、高笑いと共に):
「喰らえ!《ワサビーフ魚醤納豆ドリアンバクチー・ポップコーン弾!》」
実況アナウンサー(スタジオ):
「ポップコーン弾? 何かのジョークでしょうか……。ですが、着弾しました!一体何が……」
(カメラの映像が、突然激しい異臭の充満でグラつく。映像に映る兵士たちが、次々と嘔吐し、パニックに陥る様子が映し出される。)
ラビ山の声(映像外から):
「ウ、ウゲェェェェェッ!!なんだこの味はラビ!?納豆……ドリアン……パクチー……!?臭すぎて、鼻の奥から耳の下が痛いラビィィ!」
戦場カメラマン(山田):
「グッ……う、うわぁぁぁ!この臭いは、人間が嗅いでいいレベルではない! カメラのレンズにも、何かの粘液が! 隊長、ダメです!これ以上は! このカオスは、明らかに取材規定を超えています! ひどい、ひどい匂いです! 命の確保のため、一旦撤退させていただきます!」
(カメラの映像が途切れ、スタジオの映像に戻る。スタジオアナウンサーは、言葉を失っている。)
実況アナウンサー(スタジオ):
「……あ、あの、遊園地の戦場カメラマン、山田さんの映像が途切れました。非常に衝撃的な映像が飛び込んできましたが、現在、現地にいる自衛隊にも、この異臭とカオスな状況が広がっており、現場は一時騒然としています。」
戦場カメラマン(山田)の映像(再接続):
(カメラの映像が、突然強い光を捉える。上空の飛行船から、真っ黒なフットボール大の物体が掲げられているのが映し出される。)
「カメラの映像が再接続されました!先程のポップコーン攻撃の後、謎のロボットが現れたのですが、タバスコのような灼熱の蒸気と少年の剣技により、駆逐されました。私は今、200mほど離れた場所からガスマスクを着けて様子を見守ってるのですが、それでも臭さと目の痛さで
大変苦しいです。先程のウサ耳兵達は全員、飛行船に吸い上げられるように避難していきました」
実況アナウンサー(スタジオ):
「山田さん無理しないでくださいね!何かあったら大変ですから……」
戦場カメラマン(山田):
「ありがとうございます。現在、ご覧のように上空の飛行船から、謎の物体が掲げられています!異様なエネルギーを放っています!これは……一体……」
ラビ山の声(電波ジャックにより世界中に響き渡る):
「地球人の愛と契約を、根源から破壊する!総大将のラブオアデス様の命令に従い、恋マスター協会の最終兵器、《ラブデストロイヤー》を、今から起動するラビ!直ちに抵抗をやめ、ルルさんを返せ!さもなくば、この地球上の全ての恋愛感情が、消し去られるラビィ!」
(世界中のニュース映像が切り替わる)
実況アナウンサー(スタジオ):
「CNN、BBC、NHKワールドなど、各国メディアも一斉に緊急速報を流しています!『恋愛感情が消滅』とはどういう意味なのか――各国の専門家が緊急会議を開いています。」
【テロップ連打:SNS・ニュース速報風】
《“恋愛感情消滅”が世界トレンド1位に》
《首相、緊急声明「冷めきった夫婦関係には影響なし」》
《#ラブデストロイヤー #恋マス最終戦争 がトレンド独占》
《世界同時トレンド1位:#愛が終わる前に告白》
《国連、緊急安保理を開催へ》
———
(場面転換:遊園地内部、カナメ視点へ)
「《ラブデストロイヤー》?」
俺はヒナとルルを抱きしめたまま、上空の宇宙船を見上げた。愛の成就と勝利の熱狂は、一瞬で世界規模の絶望へと塗り替えられた。
「ヤバいね……ついに来たよ。ラブジャスティス軍の核兵器のようなもの……」
ルルの青ざめた表情が事の深刻さを物語っていた。
その時、遊園地の上空には、中継用のヘリコプターが何機もホバリングしていた。そして、バジリコの森の結界が薄くなった隙を突き、数台の自衛隊の戦車と装甲車が、遠巻きに遊園地を取り囲んでいるのが見えた。
「あれっす!カナメっち、上を見るっす!」
リリカが指をさして叫んだ。
俺たちの、このカオスな、愛の戦いは、気がつけば、日本中、いや、世界中へ全国放送されていた。
ヒナが、自分のスマホを取り出した。ニュースアプリには「遊園地で異星人同士の最終戦争勃発か」「自衛隊出動」「生中継」「恋愛感情消滅とは?」というテロップが踊っている。
そして、自衛隊の制止を振り切るように、遊園地のメインゲート付近から、見慣れた顔が飛び込んできた。
「こらカナメ!あんた何してるの!」
「ヒナ!危ないわ、今すぐそこから離れるのよ!」
騒ぎを聞きつけた、俺の母親、ヒナの母親、そして俺のクラスメイト、アツシ、ツバサ、森本さんらが、目の前の巨大な戦場と最終兵器の姿に絶叫しながら、俺たちに向かって駆け寄ろうとしていた。
「ヤ、ヤバイ……!地球が滅びる前に、まず母親に殺されるかもしれない……!」
公私両面で追い詰められた俺は、逃げ場がないことを悟った。もう、俺がやるしかない。地球のヒーローとして、そして、ルルとヒナの男として。
俺はルルとヒナを強く抱きしめ、ラブデストロイヤーを見つめた。
「くそっ!あのデストロイヤーを、どうにかするしかない!」
その時、サンバのリズムに乗って、タバスコ夫人が無言で装甲車の荷台から、何かを担いで現れた。それは、全身をタバスコとポップコーンのカスまみれにされ、拷問で完全にふにゃふにゃになった、あのハラペーニョ大佐だった。
「ひ……ひぃ……タバスコ……もう……勘弁……」
ハラペーニョ大佐は、か細い声で呻くのがやっとだ。
「さぁ、愛しのハラペン。アンタの番よ♡」
タバスコ夫人は、ハラペーニョ大佐を俺たちの《ラブ・プロテクト・ホールド》のバリアに、乱暴に押し当てた。
ハラペーニョ大佐「フガッ……!し、死にたく……ねぇ〜……」
タバスコ夫人「ヤダねぇ、私がアンタを死なせるわけないじゃないの……。心配しなくても、こんなに愛してるんだから、これからも一生一緒だよ♡」
ハラペーニョ大佐「うぅっ……やっぱり、ちょっと死にてぇ……」
タバスコ夫人は、ハラペーニョ大佐の苦悶を無視して、真剣な目つきになった。
「あのデストロイヤーが欲しがるのは、愛のエネルギー。そして、愛の裏側にある憎悪(デス)のエネルギーだよ。わたしが恋マスター協会の規律を破った時に生まれた『愛憎の業(ごう)』――愛が強すぎる故の苦しみ――、そして、この愛しのハラペンへの『巨大な、規格外の愛』。これらすべての規格外の感情を、《ラブ・ガラムマサラ》で強制的に愛のエネルギーに反転させ、デストロイヤーに喰わせてやるの!」
「カオスこそ、愛の真理っす!さあ、アタシたちバジリコ三姉妹、総力を尽くすっす!」
「はいですわ!カナメ様のために!」
「カナメ!!命がけで愛を注いでやるぜ!」
ラヴィーナ、マルティナ、リリカの三人は、ありったけの《ラブ・ガラムマサラ》の容器の蓋を開け、大量のピンク色のスパイスを、俺、ルル、ヒナが持つ愛のバリアへと、躊躇なく投げつけた。
ルル「今だよ!カナメくん、ヒナちゃん、私たちも心を一つにしよう!」
ヒナ「うん、大好きだよ、カナメくん、ルルちゃん!」
(俺の想いに、ふたりの想いが重なった。)
俺「愛してるぜー!みんな!!」
「《ラブ・ガラムマサラ》、フルチャージ!!」
その瞬間、バリアは限界を超えて膨張した。
俺とルル、ヒナの「本物の愛」。三姉妹の「俺への熱狂的な愛」。そして、タバスコ夫人の「愛憎の業」と、ハラペーニョ大佐への「歪んだ、規格外の愛」。これらが《ラブ・ガラムマサラ》によって強制的に混ぜ合わされ、融合した。
バリアは、ピンク、金色、緑が渦巻き、紫の憎悪の光が混じり合った、巨大な七色の光の塊へと変貌した。そのエネルギーは、まるで核爆弾の臨界点に達したかのように、強烈なバジリコの匂いとポップコーンの甘い香りを撒き散らしながら、上空の巨大飛行船に匹敵するほどのサイズになった。
《カオス・ラブ・ボンバー》の完成だ。
「さあ、小僧たち!行っておいで!」
タバスコ夫人は、愛の塊となったバリアを抱きかかえる俺たちに向けて、力強く笑った。
「わたくしと《PIЯI PIЯI》連合軍が、最後のカオスな花道を作りますわ!」
「全軍、突撃!カオスは愛に勝る!」
地上では、タバスコ夫人のポップコーン装甲車が、最後の力を振り絞り、空中へ向けて《ワサビーフ魚醤納豆ドリアンバクチー・ポップコーン弾》を連射した。カオスな煙幕が空を覆い、ラブデストロイヤーへの直行ルートが開かれる。
自衛隊の戦車群、そして母親たちとクラスメイトは、上空へ向かっていく七色の巨大な光の塊を、ただ呆然と見上げるしかなかった。
「ルル、ヒナ、行くぞ!」
俺は、自分たちの手の中に生まれたカオスな愛の核爆弾を信じ、ルルとヒナを抱きしめ、
【最終特攻:愛のオーバーロード】
俺たちの《カオス・ラブ・ボンバー》は、空中の巨大飛行船へ一直線に向かった。
その巨塊に気づいたラビ山は、恐怖に顔を歪ませた。
「な、なんだあのカオスはラビ!?大きすぎる、愛が大きすぎるラビィィ!?」
ラブデストロイヤーの真っ黒なボムの表面が開き、巨大な吸引口が現れた。ボムは、地球上の愛のエネルギーを吸い込むために設計されている。
「うおおお……っ!吸い込まれるっ!」
ラブデストロイヤーは、《カオス・ラブ・ボンバー》に含まれる規格外の愛を一気に吸引し始めた。七色の光の塊が、巨大な吸引口へ向かって引き寄せられ、みるみるうちにサイズを縮めていく!
「くっ!バリアが、溶けていく……!」
ヒナが顔を歪ませた。愛のバリアがエネルギーを吸い取られ、元の《ラブ・プロテクト・ホールド》のサイズまで縮小していく。
ボムへ突入する寸前、ラビ山は、俺の顔をはっきりと捉えた。
「地球人め!貴様らの愛は、あまりにも歪んで、カオスすぎるラビィ! こんなの、我々の愛の規律では処理できないラビィ! 止まるラビィィ!」
俺は、最後の力を振り絞った。
「愛してるぜ、ラビ山!お前も含めて、この世界のみんなな!」
俺は、渾身の力を込めて、縮みきった《カオス・ラブ・ボンバー》を、ラブデストロイヤーの吸引口へねじ込んだ。
ボムは、俺たちの規格外の愛の塊を一瞬で飲み込んだ。
直後、ラブデストロイヤーは悲鳴を上げた。
「グオオオオオォォォ!熱い!!オーバーロード! ラブオアデス総大将!処理できません!愛が、憎悪に、反転しきれない! カオスな愛が、ラブデストロイヤーも……規律も、破壊するラビィィィィィィィィィ!」
「うるさいぞ、ラビ山!……俺はもう帰る。こんなの、愛でも戦でもない。ただの狂宴だ。」
ラブオアデスは、呆れたように肩をすくめると、ワープゲートを開き、消えていった。
「……大体、臭いのとか、辛いのとか……バジリコの匂いすら苦手なんだよな」
真っ黒なフットボール大のボムが、七色の光を噴き出し、破裂音と共に、空中で大爆発した。
爆発は、凄まじい轟音を立てたが、一切の被害はなかった。空を覆ったのは、強烈なバジリコの匂いと、ポップコーンの甘い香り、そして大量の愛憎反転砲の紫色のエネルギーが、愛のエネルギーによってピンク色に浄化されて降り注ぐ、七色の粉雪だった。
ラブハート型飛行船は、衝撃で装甲が剥がれ落ち、コントロールを失いながらバジリコの森の奥へと墜落していく。
エネルギーを使い果たした俺たちは、バリアが消滅し、空から落下した。
「キャアアア!」
その時、巨大なポップコーンの網が、落下する俺たちを優しく受け止めた。タバスコ夫人の機転だった。
「ヒャッハーー!大成功!カオス・ラブ・ボンバーは、愛を世界へ撒き散らしたわ!」
地上では、「愛の粉雪」を浴びた自衛隊の隊員が、ライフルを捨てて、その場で「愛の詩」を詠み始めたり、隣の隊員に告白したりするカオスな事態が発生した。
———
その時テレビカメラの映像が復旧し、スタジオでは歓声が上がった。
実況アナウンサー(スタジオ):
「速報です!謎の爆発と共に、最終兵器の脅威が消滅しました!世界中の恋愛感情は、消滅するどころか、異常なまでに増幅しています!これは……人類の勝利です!」
———
母親たちは、駆け寄ってきて俺たちを抱きしめたが、愛の粉雪の影響か、涙を流しながら「あんたが世界を救ったんだね、カナメ!」「よくやったわ、ヒナ!」と、興奮した様子で褒め称えてくれた。
クラスメイトのアツシとツバサは、互いに顔を見合わせて「すげぇよ、カナメにヒナ!まさか宇宙人に勝つなんて!?」と言い合って、森本さんも「世界が大騒ぎだよ!?ヤバい!私たちもテレビに映ってるかも!」と興奮気味にまくしたてた。
俺は、隣にいるルルとヒナを見た。二人は、疲労と安堵で、俺の腕に寄りかかっている。
「やったね、カナメくん……」ヒナが小さな声で言った。
「これで……契約は……」ルルが言葉を濁した。
「これで、良かったんだよな……?」
俺たちの目の前には、空から舞い降りた七色の粉雪が、まるで祝福のように降り注いでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます