【真唯も悪い?】この『わたなれ』は違法ですか?―屋上から一緒に飛び降りるのは悪いでしょ!

1.殺人未遂罪ではなく、傷害罪の可能性


「サーシャ!最近、『れな子が悪いんだよ』が流行ってるわ。これは、法律チェックすべきよ!」


サーシャ🔷


「はい。お嬢様。『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』、通称『わたなれ』のれな子様のことですね。」


莉央👑

「真顔で、『わたなれ』の正式名称を言うのは、やめて…」


サーシャ🔷

「残念ながら、特定のパートナーがいない状態で、複数の女性を発情させても、違法になる可能性は低いです。」


莉央👑

「その言い方やめて……

だったら、アニメの冒頭で、屋上に行くシーンは?

不法侵入って、言われたりするじゃない。」


サーシャ🔷

「鍵がかかっていたり、立ち入り禁止の描写が無いので、難しいですね。

それより、その次のシーンの方を、気にすべきではありませんか?」


莉央👑

「あ~~!たしかに!!れな子ばっかり気にしてた…

真唯が、れな子と一緒に屋上から飛び降りるのってだめじゃない?これは、真唯がわるいでしょ!どうなの?サーシャ」


サーシャ🔷

「はい。お嬢様。

”飛び降りは、死ぬ危険性の高い行為であること”、

”れな子様は、生きておられること”

この二つから、殺人未遂罪の可能性があります。」


莉央👑

「やばいじゃない!

でも、真唯は助けようとしたのに、殺人ってひどいわ。」


サーシャ🔷

「そうですね。

殺意が無いと、殺人罪にはなりません。

ですが、真唯様が嘘をついている可能性もあります。」


莉央👑

「百合アニメの冒頭で、ヒロイン(スパダリ)が、主人公を助けるフリして、殺そうとしている可能性があるの!?」


サーシャ🔷

「警察は、容疑者のことは信用しませんよ。

信じられるのは、証拠だけです。」


莉央👑

「あなたは、私のメイドよ!」


サーシャ🔷

「もし、”屋上から、れな子様を突き落とした”だとしたら、

お嬢様はどう思われますか?。」


莉央👑

「殺す気!?って思うわね…」


サーシャ🔷

「そうです。いくら本人が”助けるつもりだった”と言っても、

嘘の可能性が高いので、殺意が認められるでしょう。」


莉央👑

「そうね。でも、真唯は一緒に飛び降りてるわ。」


サーシャ🔷

「何度、聞いても意味が分かりませんが、

さすがに、”ただの友達と心中するつもりだった”という可能性は低いので、殺意は否定されるでしょう。」


莉央👑

「よかったわ。『わたなれ』が、物騒な百合アニメじゃなくて。」


サーシャ🔷

「もし、真唯様とれな子様が『特別な関係』になって、

れな子様が悪さをして、真唯様が思いつめるようなことがあれば……、どうなるでしょうね。」


莉央👑

「物騒な百合アニメにしないで!」


サーシャ🔷

「殺意が無いとすると、傷害罪になります。

もっとも、れな子様が怪我している様子もないので、もっと軽い暴行罪の可能性もありますが…。」


莉央👑

「一気に罪が軽くなった気がするわ。」



2.勘違いだから、正当防衛は成立しない


サーシャ🔷

「次は、真唯様に正当防衛があった、と言えるかが問題となります。」


莉央👑

「正当防衛?真唯は、れな子から、まだ悪いことをされてないわ。」


サーシャ🔷

「正当防衛は、本人だけじゃなくて、他人を助ける場合にも、適用されます。

それと、もし、れな子様が不貞を働いても、屋上飛び降りは正当防衛になりません。お嬢様。」


莉央👑

「ふーん。つまり、真唯が ”飛び降りようとする、れな子” から ”かわいそうな、れな子” を助けるってことかしら?」


サーシャ🔷

「その通りでございます。お嬢様。

正当防衛になると、処罰されません。」


莉央👑

「なら、真唯は悪くないってことね。」


サーシャ🔷

「お嬢様、残念ながら、間違いです。

正当防衛は認められません。」


莉央👑

「何でよ!?」


サーシャ🔷

「勘違いだからです。”飛び降りようとするれな子様”がいないので、正当防衛の条件に当てはまりません。」


莉央👑

「悪い人がいないと、正当防衛にならないってこと?」


サーシャ🔷

「その通りでございます。お嬢様。」



3.勘違い+やりすぎ=誤想過剰防衛


莉央👑

「結局、正当防衛じゃないなら、傷害罪ってこと?」


サーシャ🔷

「いいえ、違います。お嬢様。

結論から申しますと、誤想過剰防衛になります。」


莉央👑

「何よ、ごそーかじょーぼーえーって」


サーシャ🔷

「勘違いで、正当防衛をして、

さらに、正当防衛としてもやりすぎ、ということです。」


莉央👑

「複雑で、むずかしいわねー。」


サーシャ🔷

「”れな子様が、飛び降りようとしている”という勘違い、

”飛び降りを止めるにしても、一緒に飛ぶ”ことはやりすぎ。

勘違い(誤想)とやりすぎ(過剰)があるので、誤想過剰防衛です。」


莉央👑

「踏んだり、蹴ったり的なことかしら?」


サーシャ🔷

「違います。お嬢様。適当すぎます。」


莉央👑

「つ・ま・り、誤想過剰防衛で、真唯は悪くないってことね。」



4.傷害罪の刑が無くなったり、軽くなったり、ならなかったりする


サーシャ🔷

「正当防衛の場合は、罪になりませんが、

誤想過剰防衛の場合は、刑を”免除”または”軽く”できるので、

刑が無くなったり、軽くなったり、ならなかったりします。」


莉央👑

「何か、適当ね!」


サーシャ🔷

「裁判所が、色々な事情を考えて、決めるので、適当ではありません。

お嬢様、適当に発言しないでください。」


莉央👑

「急に厳しいわね!悪かったわ。

結局、真唯は悪いの?悪くないの?」


サーシャ🔷

「”罪があれば、悪い”という事であれば、

もし、刑が免除になっても、形式的には傷害罪が成立するので、真唯様は、悪いということになります。」


莉央👑

「人助けをしようとしても、悪いことになるのね。」


サーシャ🔷

「お嬢様。”罪があれば、悪い”という考え方は、人の上に立つべき者には、ふさわしくありません。罪は罪、人助けは人助けとして分けて評価すべきです。]


莉央👑

「…わたしが悪かったわ。

サーシャ、ありがとう。

有栖川たるべき者、人の評価には、気をつけないとね。」



5.大事な人は、身を挺してでも守りたい


莉央👑

「思ったより、長かったわね…。」


サーシャ🔷

「これでも、細かい話は飛ばしてます。

この後、真唯様が紗月様と一緒に、どこかの家に盗みに入れば、司法試験に出せますね。」


莉央👑

「どういう状況よ!そんな『わたなれ』想像したくないわ!!」


サーシャ🔷

「もちろん、それは冗談ですが、

ここまで、複雑な話になるとは、思いませんでした。さすがのスパダリです。」


莉央👑

「身を挺してまで、人を助けるところは、見習わなくてはね。」


サーシャ🔷

「その通りでございます。お嬢様。

人を助けることは、自分を助けることにもなります。」


莉央👑

「ところで、サーシャは、わたしが飛び降りそうにしてたら、助けてくれるかしら?」


サーシャ🔷

「お嬢様が、飛び降りないように、追い詰めるのが、メイドのお仕事です。」


莉央👑

「そんなわけないでしょ!やさしくしなさいよ!泣くわよ!」


サーシャ🔷

「お嬢様が、他の方に、追い詰められたときは、

この身をもってお助けいたします。」


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この○○は違法ですか?──百合 ゆりはん @yurixhan

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