私は
耳鳴りが騒がしい夜である。
一瞬プツン、と言う音の後にキーンと音がする。
一度突発性難聴のようなものが起きたことがあって以降、右耳は左耳より聴力が弱り、自分の右側に立たれて話をされるとなかなか話が頭に入らないことがある。
全く聴こえないわけではないのだが生活において若干迷惑なことには変わりがない。
老いた先のことを考えるとやや憂鬱になる。
老いが来る前に旅立ちたい気持ちは、やはり病に冒された私としてはある。
私の敬愛するバンドの作詞作曲をするベーシストは「自分の渾身の一作が出来ても、世界が変わらないのはつまらなかった」
と言った。
その後もつらつらと喋ったが、最後にはファンがいたから、とまとめてくれた。
そして、結成20周年記念ライブの締めをその渾身の一曲で締めた。
ファン冥利に尽きる。
また、それだけ彼らが自信を持ってあの曲を世に放ったのだと思うと、ファンとしては誇らしく思う。
私の渾身の一作は、閲覧数がようやく1000を越した。
SNSで発信していない割には伸びた方だと思うし、最初は500閲覧行けばいいと思っていた。
レビューやコメントは少ないが、それでも、私としては承認欲求が満たされて、満足のいく数字になったと思う。
私という、両親の渾身の一作は、やはり世の中にはあまり認められていない。
それがやはり、子どもとしては居た堪れない気持ちになる。
小さな小さなコミュニティの中で、ぬくぬくと過ごしてはいるが、それでもやはり、作品の私としてはもっと評価してほしい、という承認欲求が高まるばかりである。
私がもう一つ敬愛するバンドの作詞作曲をする人も、あるMCで「俺の曲は紙切れだ(ゴミだ、と言っていたような気もする)、道端に落ちているその紙を拾って、読んでくれたのが君たちで、俺たちはすごい確率で出会うことができたんだ」と言った。
彼らの曲がゴミだとか、紙切れだとか、一瞬も思ったことがない。
そんな蔑まないで欲しい、そう思い涙が出た。
だが、それを全てひっくるめて、愛してくれてありがとう、と締め、アンコールにプラス一曲、つまりセットリストにはなかった曲を追加で演奏してくれた。
大人たちの事情を考えれば、そんなことをするのは恐らく御法度ではあるのだろうが、ファンとしてはそんな演出は何一つ文句なく、涙を流しながら聴いていたと思う。
そんなことをうつらうつらと書いているうちに、8月が終わろうとしている。
8月の頭に祖母が亡くなり、そこから今日に至るまでの記憶が本当にない。
空っぽの8月になってしまったと思う。
世界がモノクロに見えて、褪せた世界の中にいた。
親族の中では気丈に振る舞っていたと思う。
だが一人になるとついつい、考えたり、エピソードを思い出したりしてしまっては涙を流していた。
その後、父と酒を酌み交わす日があった。
彼の誕生日で、居酒屋で、飲む機会があった。
最も気丈に振る舞っていた父がポロリと弱音を溢した時は、やはり人間だな、と思った。
しかし、それにしても常人離れした速度で酒を飲んでいた。
これは少し面白かった。
と、同時に堰き止めていたものがワッと溢れ出したのだと思うと、父親の人間味を感じた。
柔くて脆い、そんなところが垣間見えた。
徒然なるままに、書き起こしてみたが、やはりどうもまとまらない。
友人たちの前では、おちゃらけた人間であろうと心がけている。
面白いと思って欲しいし、面白い自分が好きだからだ。
また、敬愛する人の話になってしまうが、敬愛する俳優のエッセイがとても好きで、何度も読み直してしまう。
彼が面白い自分が好きだから、という理由でひょうきん者を演じている。
そんなことも書かれていたな、と思う。
彼の出演する映画やドラマでも、やはりピリリとし、目立ち、印象に残る演技をする。彼に憧れている。
遅咲きのスターだ、私も彼のように遅咲きでありたい。
人間味たっぷりの、私という作品が、もっと世に認められれば、どれだけ幸せなことだろう。
と、思う。
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