第2話

 現場には、やじ馬が集まっている。

 現場を荒らされないように、衛兵が両腕を広げて、やじ馬たちを遮っている。


「入らないで! 調査の邪魔をしないように!」


 衛兵が声を荒げて、一般市民たちを抑止している。

 私は、衛兵にギルド職員カードを提示して、現場に通らせてもらう。

 私はその亡き人の顔に見覚えがあった。


「サウスさんですね……」

「知っている人間か? 大した外傷もなく死んでいるので、何者かの攻撃を躱したときに転倒して、打ちどころが悪かったのかもな」


 衛兵が質問してくる。私は頷き、しゃがみこんで、サウスさんの外見を確認する。

 身体には外傷がある。剣による傷のようだ。


(首元だが、太い血管に傷はなさそうだ。大した出血はない。これが死因? 切り傷的に、鉄の剣のようだけど……)


 不審に思い、鑑定スキルを使ってみる。すると、体内に『バジリスクの毒』があることが判明した。


「バジリスクの毒に侵されてますね。死因は毒による死亡です」

「あんた、鑑定スキル持ちか? 毒が死因だと? つまり、何者かが毒の剣で切り付けて、逃げて行ったということか?」

「恐らくそうでしょう」


 私は衛兵隊長と思われる人と話しつつ、辺りを追跡スキルで確認する。


「現場、結構、人入り込んじゃいました?」

「いや、第一発見者と我々だけだ」

「そうですか」


 それぞれの足跡を調べていく。第一発見者と衛兵の足跡を照合してみても、一人分だけ足跡が足らない。これが犯人の足跡だろう。

 私は魔道具の写真機で、その足跡を撮影しておいた。

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