国立社会研究所、その実態は国の予算で運営される、究極の“ホワイト職場”だった。
@yuhi478
第1話
国立社会研究所の一日
朝7時、東京都郊外の閑静な丘陵地に佇む「国立社会研究所」。近代的なガラス張りの建物は、遠目には威厳ある国の施設に見えるが、中に入ると空気はまるで別世界だ。職員たちは公務員らしいネクタイやスーツを身にまとうが、その足取りは軽く、どこかリゾート地のバカンスを思わせる。
8:00 朝のルーティン
新入職員の佐藤健太(25歳)は、初出勤の日を迎えていた。入所試験は難関と聞いていたが、面接で聞かれたのは「好きなカフェの雰囲気」と「休日の過ごし方」だけ。拍子抜けしつつも採用通知を受け、期待と不安を抱えて研究所の門をくぐる。エントランスには受付嬢がいるが、彼女はネイルを磨きながら「いらっしゃいませ~、適当に座っててね」と笑顔。健太が職員証を提示すると、「あ、それ見せる必要ないよ。顔パスでOK!」と一蹴される。すでにこの研究所の“緩さ”が漂っている。健太が配属されたのは「社会動向分析課」。課長の田中(50歳、20年選手)は、朝からソファに寝転がり、タブレットで海外ドラマを視聴中だ。「お、佐藤くん? まあ適当に座って。コーヒーでも飲む? うちのマシンはスタバより美味いよ」とニヤリ。デスクには書類らしい書類はなく、代わりに漫画雑誌やスナック菓子の袋が散乱している。
10:00 業務開始(?)
業務開始の時間だが、課内は静かだ。誰一人パソコンに向かっていない。隣の席の先輩・山本(35歳)は、スマホでソシャゲに没頭中。「佐藤くん、これ課長公認の“リフレッシュタイム”だから。午前中は基本、自由時間ね」とウインク。健太が「え、でも社会動向の分析って…?」と尋ねると、山本は笑いながら言う。「分析? ああ、たまにネットのトレンド見てレポート書くけど、ググってコピペで終わるよ。楽勝!」課長の田中が立ち上がり、「よし、午前のミーティングやるか!」と声を上げる。ミーティングルームに移動するが、議題は「昼飯どこ行く?」。10分で「近くのイタリアンにしよう」で決着し、残りの時間は課長のハワイ旅行のスライドショー鑑賞会に。健太は「これが国の研究所…?」と内心呆れるが、先輩たちのリラックスぶりに引き込まれていく。
12:00 昼休憩(と呼ぶには長い)
昼食は11時半から14時まで、2時間半の“公式休憩”。イタリアンでたらふく食べた後、職員たちは研究所内の「リラクゼーションルーム」へ。そこにはマッサージチェア、ビーズクッション、果てはハンモックまで完備されている。健太が「これ、国の予算で…?」と呟くと、山本が「細かいこと気にすんな! ここはそういう場所だ」と肩を叩く。昼寝をする者、ボードゲームに興じる者、YouTubeで猫動画を見る者。健太もついウトウトし、気づけば13時50分。慌ててデスクに戻るが、誰も仕事モードではない。「午後はもっと緩いよ」と山本が笑う。
14:00 午後の業務(ほぼ趣味)
午後の業務は「社会動向レポート作成」。健太に課せられたのは「若者のSNS利用動向」についてまとめること。山本が「Twitter…いや、Xでバズってる話題を3つくらい拾えばOK。300字でいいよ」とアドバイス。健太がXを開くと、確かに猫ミームやアニメの話題がトレンド入りしている。適当にスクショを貼り、「若者はミームを好む」と一文書いて提出。課長の田中は一瞥して「うん、いいね! これで今月のノルマクリア!」とゴム印を押す。所要時間、15分。その後は「自由研究タイム」と称して、職員各自が好きなことをする時間だ。ある者はオンライン英会話を始め、ある者は編み物をし、課長はVRゴーグルで仮想旅行を楽しんでいる。健太は「これ、研究所として何を研究してるんですか?」と尋ねると、田中が「ん? 社会の…なんか、こう、雰囲気? まあ、細けえことはいいんだよ。国から予算出てるし、監査も来ないし」と豪快に笑う。
16:00 早めの終業
16時になると、田中が「はい、今日もお疲れ! みんな有給消化率100%目指そうぜ!」と宣言。職員たちは「やったー!」と歓声を上げ、そそくさと帰宅準備。健太が「え、16時で終わりですか?」と聞くと、山本が「まあ、たまに17時まで残るけど、だいたいこんな感じ。有給は毎月20日くらい取れるよ。監査? 10年に1回くらいしか来ないし、来たときも課長が適当に誤魔化すから大丈夫」とニヤニヤ。健太は呆然としつつも、どこかこの緩さに魅了されている自分に気づく。「これが…公務員の楽園か…」と呟きながら、初日の勤務を終えた。
エピローグ
帰宅後、健太は友人に「社会研究所、マジでヤバい。仕事ほぼない」とLINEを送る。友人は「そんな職場あるわけねえ!」と返すが、健太はすでに明日の「自由研究タイム」に何をしようか考え始めていた。社会研究所、その実態は国の予算で運営される、究極の“ホワイト職場”だったのだ。
国立社会研究所、その実態は国の予算で運営される、究極の“ホワイト職場”だった。 @yuhi478
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