転生聖女らしいですが、記憶がないまま前世の魔王と再会しました
からから
プロローグ
五百年前、エミューヤ王国は魔王との戦いによって滅亡の危機にさらされていた。
魔王軍の圧倒的な力を前にもう滅亡は避けられないかと思われていたその時、聖女コーデリアが魔王を倒しエミューヤ王国を救った。
これが歴史学でも頻繁に取り上げられるこの王国を語る上で絶対に欠かすことのできない出来事である。その証拠に一番大きい広場では聖女コーデリアの像が建てられており、五百年経った今でも風化しないよう定期的に整備されている。
エミューヤ王国に住む人々にとって聖女コーデリアとは尊敬や崇拝の対象なのだ。
そして私、ルティアにはどうやら聖女コーデリアが転生しているらしい。
「ルティア様! あなたはまた外に出て!」
「うるさーい! 外出ぐらい好きにさせてよ!」
家の部屋から飛び出た私に対して口を出してきたのはヒユノー。瞳がルビーのように燃えている。
ヒユノーは私の教育係だ。元々私の姉様の教育係をしていたらしいが、私が生まれて私の教育係に志願をしたと聞いている。建前上は姉様が教育係の手なんていらないくらい立派な方になったからと言っているけれど、私を含めたほんの一部の人間は本当の理由を知っている。
私が聖女コーデリアの生まれ変わりだと気付いたからだ。
ヒユノー曰く、五百年前は聖女コーデリアが魔王を倒すために組んだパーティーのヒーラーを担当していたらしい。その時聖女コーデリアに大層世話になって、恩を返すために私の教育係に志願したようだ。
授業がある時ならともかく、空き時間さえ自由に家の外に出ることを咎めるほどには過保護だ。
ヒユノーに追いつかれないよう必死に走りながらチラと後ろを振り向けば窓越しに手を振っている人物が見えた。
「ふふっ。ルティア! 暗くなる前には戻ってね」
「はーい、姉様!」
「ルルーラ様はすぐそうやって甘やかして!」
「だってルティアがかわいくて」
ヒユノーから怒られているのは私の姉であるルルーラ姉様。深いオニキスのような瞳の色は姉様の思慮深さを表している。
私はメイドの魔法によって自分の服装が変わったことを確認すると、もう後ろを振り返ることはなかった。メイドの魔力からほんのり感じる暖かさが私の背中を押してくれているような気がした。
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