YOUTUBER失踪について

本書は、2024年10月に発生した、YouTuber失踪事件に関する複数のデジタル記録・映像ログ・警察資料・匿名投稿を再構成したものである。

対象となる配信者「ユウト」は、心霊系コンテンツを中心に活動していた登録者数18万超の動画制作者であり、事件当日の映像はライブ配信として記録され、多くの視聴者が“異変の瞬間”をリアルタイムで目撃した。

事件発生後、当該アカウントは削除されたが、複数のミラー記録と字幕データがネット上に断片的に残された。また、視聴中のユーザーによるスクリーンショットやSNSの書き込み、そして一部復元されたログにより、映像の内容と配信中の挙動がある程度再構築されている。

ただし、記録された映像には時系列の不一致、編集履歴のないカットの追加、映像内人物の挙動と音声の同期ミスなど、通常の動画編集では説明のつかない“構造的な異常”が多数存在する。中には、そもそも「誰がこの映像を撮っていたのか」が不明な場面も含まれており、当初は虚構や投稿者の自作自演と見なす意見もあった。

しかし、ユウト本人が正式に行方不明者として警察に届け出られた事実、警察の公式報告書に記載された“データ異常”、事件後に新たに投稿された映像に映り込んだ「不在の人物」など、後追いの記録までもが“この映像を中心に発生している”ことが判明している。

読者諸氏におかれては、ここに記されたものをただの虚構とは受け取らず、

**「映像とは、誰が記録し、誰が再生しているものなのか」**という問いのもとで読んでいただきたい。

記録構成担当：匿名　　2025年1月

【冒頭：関係者の証言（2024年12月 某インタビューより）】

「ユウトの配信は、たしかに“消える寸前”だったんですよ。視聴者数も一時期より落ちてきてたし、本人も結構焦ってたと思う。で、あの“旧トンネルの回”がラストチャンスみたいな空気、ありましたね。実際、あの夜の配信は久々にバズったんです。なのに──消えた。しかも、途中までずっと自撮りしてたのに、後半からは……誰が撮ってたのか、分からないんですよ。フレームの中にユウトはいる。でも、カメラが勝手に動いてる。ズームしたり、パンしたり。それ、操作してる人間がいないんです」

「しかも最後、“やっと みられるように”って声、聞こえたでしょう？あれ、たぶん……本人の声じゃないんですよ。言い方が変っていうか、息の混ざった喋り方で……俺、あれ、ずっと耳から離れなくて。あの声が、今でも、たまに夜中に再生されることがあるんです。頭の中で」

タイトル：『旧トンネルに潜む声【ガチ心霊】』

配信者：@Yuto_UraChannel

配信日時：2024年10月25日 21:00〜（ログ：削除済）

《配信開始 00:00》

画面が開け、車内からの映像。照明は薄暗いヘッドライトのみ。ユウトが運転席から振り返って話しかける。口元には笑み。疲れが滲むようにも見える。

ユウト

「はい、どうもこんばんは。ユウトです。今日も裏チャン、やっていきましょう。えー、今いるのは、○○県の某所……って言っても、場所は出せませんけど、ガチの“旧トンネル”スポットです」

助手席には誰もいない。カメラは固定されており、彼の手元で時折微妙に角度が変わる。運転音なし。配信画面に視聴者数：738人の表示。

ユウト

「今日は一人なんで、まあ、ちょっと緊張してます。でもね、ここ、やばいって噂だけはずっとあったんで……」

コメント欄が流れる。

@kenji24：きたー！

@REIKO：最近テンション低くない？

@334watcher：ひとり配信まじすき

@syoko_chan：この場所ほんとにヤバイって聞いたことある…

ユウト

「ほんとなら、もう一人来る予定だったんですけど、ドタキャンされました。まあ、そいつの判断は正解だったかもしれない。……なんか、着いた瞬間から耳が変なんですよね」

彼は片耳を押さえ、眉を寄せる。風の音も、車の外の環境音もない。映像はほぼ無音。

ユウト

「じゃあ、行きます。旧○○トンネル、突入します」

彼はライトを手に持ち、車外へ出る。カメラも同時に動く。以降は頭上装着型のGoPro映像に切り替わる。

《配信 07:12》

映像はトンネル入口。外壁は苔むしており、上部に読めない落書き。中はほぼ真っ暗。光量不足により画面の解像度が荒れる。

ユウト

「中、めちゃくちゃ湿気あります。しかも……なんか、音が、吸われてる？」

GoProのマイクに、かすかに「ふ……ふ……」という音が混じる。風ではない。息のように聞こえる。

ユウトが立ち止まり、何かに気づいたように振り返る。

映像に誰もいない。

ユウト

「いま、しゃべった？」

コメント欄がざわつき始める。

@erinaQ：今声したよね！？

@NOBU_ROCK：「ふ」って聞こえた……

@hater_tube：おまえのマイクだろ

@not_found7：……まじで後ろいたくね？

ユウトが再びトンネル内へ向き直る。ライトの先に、人影は見えない。

だが、GoProの映像がわずかにカクつく。

ユウト

「ちょっと待って……」

《配信 12:41》

彼がライトを低く構え、地面を映すと、何かが落ちていた。

靴紐。白いスニーカーの左足分。

彼がそれを拾い上げる。

ユウト

「誰かの落とし物？　……いや、でも、これ──」

ここでコメント欄の動きが止まる。チャット表示が更新されない。

画面には「接続が一時的に不安定です」の表示（ただし、録画映像では音声は滑らかに続いている）。

ユウト

「……あれ？　今チャット止まってない？」

彼が自分のスマホを確認しようとするが、映像の手元がブレる。

《配信 14:22》

突然、カメラの角度が変わる。

GoProではなく、第三者視点のようなフレームに切り替わる。

ユウトはフレーム内で立ち尽くし、真っすぐカメラを見ている。

ユウト

「……おい、誰だよ」

背後には誰もいない。だが、カメラはユウトにズームインする。

ユウトが一歩、後退する。

その直後、フレームの端が大きく揺れ、ピントが一瞬外れる。

ユウトが小さく呟く。

「……やっと、きたのか」

映像は数秒間、暗転。音声のみが続く。

「……やっと、これで、俺も……」

【配信ログ：異変以降の記録】

《配信 14:23〜21:37》

画面は一瞬の暗転を挟み、復帰。ユウトの姿はフレーム外に消えている。

以後、誰も映っていないはずの空間を、カメラが自律的に操作しているかのように動きはじめる。

・画面は静止せず、左右にパン

・時折、トンネルの奥にピントが合い、わずかな動きが確認されるが、形状は不明

・音声は無音。ノイズも環境音も途絶えている

・画角の中心に「穴」のような暗部が徐々に拡がっていく

21:08

コメント欄に異変。

複数のユーザー名が、存在しない文字列に書き換わる。

一部記録：

@■■■■■■■：みられてる

@77__：みてる

@aoya0：つぎは

@yuto_ura（※投稿者名と同一）：……ここにいるよ

配信画面に投稿者本人の名前が表示されたコメントは、後日ログ復旧でも再現不能。

該当IDは存在せず、ログに“投稿時間のみ”が刻まれていた。

21:13

一瞬だけフレームに、ユウトの顔のアップが挿入される。

無表情。

口元だけがわずかに動いている。

発声はないが、唇の動きは「やっと　みられるように」と読唇できる。

その映像は1.4秒のみ。

以後、再び無人のトンネルが30分以上にわたり映され続ける。

21:37:13

配信が突然終了。ブラックアウト。

「配信が終了しました」という自動メッセージが表示されたが、

終了操作のログが残っていない。

【SNSログ：配信直後の反応（抜粋・要約）】

@xx_Saya_xx（21:38）

え、ユウトくん消えた？演出にしてもやばくない？

@snuff_cam_02（21:41）

最後の顔、挿入じゃなくて“前から入ってた”っぽい。今、前の配信にも写ってた。

@watchdog_blue（21:45）

「みられるように」ってどういう意味……？

※この投稿は3分後に削除され、アカウントは凍結（凍結理由不明）

@oldtube_archive（21:59）

この動画、配信中なのに「録画」って表示出てなかったか？

→返信多数：「たしかに見えた」「アーカイブ扱いだった」

【警察報告書（概要・一部公開）】

報告日：2024年10月26日

提出機関：○○県警生活安全課

案件番号：第24-1389号

内容：YouTube配信者・YUTO（本名非公開）の失踪に関する現地調査

【現地状況】

・旧○○トンネル付近にて、三脚付き配信機材を発見

・記録媒体は抜かれており、レンズ部分に指紋・皮脂痕なし

・トンネル内には複数の足跡（スニーカー跡・長靴跡など）が見られるが、交差点以降の先に“自分の足跡のみが戻っている”箇所あり

・本人のスマートフォンは車内ダッシュボードにて発見、ロック解除済

・最後の使用記録は「21:08 自分宛てに空メッセージを送信」

【失踪者の痕跡】

・映像上では21:13に一度姿が確認されるが、これは記録映像における“再挿入”と考えられる

・映像処理や編集の痕跡はなし

・当局でのログ解析において、配信映像の一部フレームに“未解析の人物影”を検出

・その影はユウトと酷似しているが、3年前の彼の姿（体格・髪型）と一致

【報告結語】

本件は、現行の技術および人的関与による説明が困難であり、捜査は継続とする

ただし、当該アカウントからの配信は現在も不定期に「再開」される現象が確認されており、

その出所と制御元は特定できていない

【再開ログ（事件から48日後）】

再配信日時：2024年12月12日 2:44（未告知）

プラットフォーム：旧YouTubeチャンネル（削除済のはずのアカウントから発信）

通知：チャンネル登録者の一部端末に「新着ライブ」通知

配信名：『みてるひと』

《配信開始：00:00》

画面は真っ黒。音もない。

ただ、配信は確かに動いている。

右下に「LIVE」表示、視聴者数：初期6人。

1分35秒後、ノイズ音と共に画像が浮かび上がる。

旧トンネルではない。どこかの家庭の一室。

薄暗い蛍光灯。布団、鏡、机。誰もいない。

画面右側に見慣れたアイコンが一瞬現れる。

──それは、ある視聴者が使っていたアイコンそのものだった。

【視聴者ログ／匿名掲示板書き込み】

スレタイ：ユウト配信“再開”したぞ【12/12】

No.44：

通知きたけど、再生できない。なのに再生回数だけ増えてる。

No.77：

まって、これウチの部屋じゃない？　配置もまんまなんだけど。

No.89（ID不明）：

いま、スマホのカメラ起動したら、配信と“同じ部屋”が写ってる。鏡の角度も、動きも一致してる。自分がいないだけの鏡の角度も、動きも一致してる。自分がいないだけ」

【配信映像の異常】

配信14:22

画面に誰もいないのに、カメラがパン。

左側の鏡に、一瞬だけユウトの後ろ姿が映る。

振り返らない。何かを見つめている。

鏡の奥には、部屋の一部でない“なにか”がちらつく。

配信18:02

画面下部に新しいコメントが浮かぶ（入力された形跡なし）。

みてるよ　今度は君の番

その直後、

視聴者側のスマホ・PCに不具合発生再生

• カメラが勝手に起動

• 画面が暗転後、自室の映像が映る（視点が“第三者”）

• アプリ一覧に「ura_live_002」という見覚えのないアイコンが追加される（タップ不可）

【終章：視聴者からの報告（投稿・要約）】

「鏡の奥に、ユウトがいました。でも、顔が動いていなくて……だけど、口だけが、こう動いてたんです。“みえるのは　みてるから”って──。その夜、スマホのカメラがずっと起動したままでした。電源切っても、バッテリーが減らなくて、ずっと、部屋を撮ってた。私が、いない部屋を……」

【補記：発行者による警告】

本書を読了後、カメラ・マイク機能が自動起動する場合があります。

通知設定を見直してください。

「自分が映っていない映像」が再生された場合、すぐに端末の電源を切り、反射するものから離れてください。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　了