第24話 伝説の金属
微弱な反応がある場所はミリタリアの西部地帯、
荒廃した岩山と鉄鉱層が複雑に入り組む鉱山区域。
ジョージはひとり、背後にそびえる基地を振り返ると深く息をついた。
手には新たに支給されたスキャン装置と、
ミリタリア技術局が開発した鉱石共振探知器を持っていた。
それに加えて、自身の"マップ"と"鑑定"スキルを併用し、
断層や地熱変動、鉱物反応を読み取っていた。
それでも、オリハリウムの気配は一向に掴めなかった。
「……まるで、昔の地球で水脈を探してるみたいだな」
複雑な地質と膨大な鉱物データの中から、
特定の金属を見つけ出すことの難しさに、
ジョージは自然とため息を漏らす。
探索は数時間に及び、何度も空振りが続いた。
気温は上がり、探知装置の表示にもノイズが混じり始めていた。
「無理やり地表から探しても無駄か……スキャンと鑑定を同時に使ってみるか」
ジョージの考えはスキャンをした際に見える情報を瞬時に鑑定する事であった。
今までスキャンをする毎不明な鉱石は発見しているがすぐ見失う。
一瞬マップに表示されるような現象であった。
その瞬間に鑑定を使おうとしていた。
「……スキャン」
徐々に地下深くにうねるような洞窟が、その先端に不自然な停滞と高濃度のエネルギー反応を確認する。」
「……ここだ」地面に膝をつき、拳をそっと当てる。
「鑑定」視界に浮かび上がる透明なインターフェース。
その奥に表示された文字列が、彼の目を見開かせた。
――『オリハリウム鉱脈:極高純度・/希少性:レジェンダリー』
――「……見つけた、間違いない」安堵と達成感が胸を満たす。
すぐさまアトラス隊とミリタリア基地へ通信を送る。
「こちらジョージ。座標を送る。目的のオリハリウムを発見した。
鉱脈は地中深く、相応の掘削が必要だ」
その報告を受けたミリタリア基地では、直ちにスロボダン将軍の指揮のもとで採掘部隊が組織され、発見現場へと急行した。
「何十年探しても見つからなかったものを……まさか外部の者が発見するとはな」
スロボダンは唸るように呟いたが、その表情は苛立ちよりも興奮に満ちていた。
「この発見で我がミリタリアは歴史に名を刻むことになる。
もちろんお前の名もな」
採掘作業の間、ジョージは基地へ戻ることを許され、
ミリタリアの首都キャピトルを視察する機会を得た。
キャピトルは巨大な金属ドームで覆われた軍事都市で、全域が地下と地上の多層構造で形成されている。
あらゆる建築物が機能性を優先して設計され、軍服姿の市民たちが整然と行進し、あちこちで訓練が行われていた。
「まるで都市全体が一つの軍隊みたいだな……」
ジョージはそう呟きながらも、
この惑星の人々が五百年ものあいだザーグと戦い続けてきた事を、
”凄い.....”と思っていた。
ミリタリア中央兵器開発局――キャピトルの心臓部とも呼ばれる巨大な地下施設に、
アトラス隊とジョージは招かれていた。
発見された高純度オリハリウムは慎重に掘削され、
極秘にこの場所へと搬送されていた。
局内は冷たく煌々とした照明に照らされ、壁面は全て銀灰色の金属で統一されている。
無数の開発機械と溶鉱炉が並ぶ中、鋭い眼差しをした科学者と技術者たちが慌ただしく動いていた。
スロボダン・ミロゼビック将軍が重々しい足取りで現れると、場の空気が一変する。
頬の古傷が光に照らされ、彼の威厳をさらに引き立てていた。
「アトラス隊、そしてジョージ。
貴様らの働きは、我がミリタリアにとって歴史的偉業だ。
今ここで、次世代ザーグに対抗する“新兵器”の開発を開始する」
将軍の言葉に、技術者たちの間から歓声が漏れる。
その熱に押されるように、ジョージが一歩前へ出た。
「俺らの装備もオリハリウムで慎重してもらえないか?」
「もちろんいいに決まっているだろ、君たちは祖国の英雄だ!好きなだけ使うがいい」
スロボダンが豪快に笑いながらジョージに答えると続けた。
「そこにいる技術士に各戦闘スタイルなどを説明してくれ」
マリアが一礼して口を開く。
「私は中距離からの指揮戦闘を得意とし、エネルギーライフルと戦術支援装備を希望する」
次にアルノ・コレが続く。
「俺はヴォラク式の突撃戦法と重火器だ。
軽量型パワードスーツと榴弾ランチャー、
それと近距離用のパルスショットガンがほしい」
アリシア・シロは軽く髪をかきあげて言った。
「私は魔導素子を使う火炎魔法が得意。
中距離からの属性攻撃に特化しています」
キャシーは優しく微笑みながら答える。
「私は後衛支援型の光属性ヒーラーです。
主に回復とバフ効果を担います」
リン・エヌギュイエン。
「私はシェンダオ式の格闘術を使います。
パワーよりスピード重視で、近接戦が専門です」
アルノ・シュベがやや照れくさそうに手を上げた。
「俺は巨大人型兵器のパイロットです。
近接戦も可能だが基本は大型メカによる戦闘が中心。
今回の装備強化で火力と防御をさらに上げたい」
フェリシア・フェングローは静かに答えた。
「私は隠密と狙撃支援担当。
プラズマスナイパーライフルの精度と出力を上げられれば、
敵の司令塔を一撃で沈められるわ」
最後にマックス艦長が前へ出た。
「私も戦場に立つことがある。
主にハンドガンとライトサーベルでの近接戦闘を行う。
士気が乱れた際の指揮維持も、私の役目だ」
技術士がそれぞれの情報をスロボダンに伝えると、最後にジョージを見据えた。
「貴様は……何者だ?
あの戦闘記録を見た時、私は目を疑った」
ジョージは小さくうなずきながら、静かに答えた。
「俺は“タンク”という役割を担っている。
全ての敵意を自分に集中させ、仲間を守る盾だ」
「タンク……?」スロボダンが眉をひそめる。
「昔の戦術概念です。
前衛で壁役になると言う事だ。俺の装備は、どんな攻撃にも耐えられる頑丈性と近接格闘術もするので機動性も可能な限りほしい。そして盾も新しいのを頼む」
スロボダンが腕を組んだまま、一歩前に出た。
「貴様がタンクという古代戦術を体現するなら、
それに見合った装備をこちらで設計しよう。
防御に特化した大盾、衝撃吸収と自動回復を兼ね備えた鎧、
そして攻撃力を強化するガントレット――これらがでどうかな?」
ジョージは真剣な表情でうなずいた。
「ああ、理想敵だ」
スロボダンは頷くと、技術者たちに鋭く命じた。
「すぐ設計に取りかかれ。
オリハリウムの特性を最大限に引き出し、全装備を最上級に仕上げろ」
一同力強い返事のあとすぐさま作業に取り掛かった。
「これで……さらに守れる」
仲間たちが微笑む中、ミリタリアの鍛冶炉に火が灯された。
伝説が、鋼となって形を成す時が迫っていた。
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