@amane404

一話完結

吾輩は猫である

名前はもうある

ミケ、それが吾輩の名前だ

なんて、どこそこの文豪の真似をしてみたが似合わないね

どこで覚えたかって?ここの家の主はとても読書家なんだ、僕をこの家に迎え入れた時

キラキラした目をして言った


「吾輩は猫である、名前はミケであるー!!」


なんて僕をギュッと抱きしめながら

ああ、昔のこと前までなら思い出しもしなかっただろうな

これが走馬灯ってやつか

そう、僕はもう寿命だ

自分の体だからわかる、あと少しで僕の心臓は止まって、僕の体は冷たく、固くなっていくんだ

そんな姿彼女に見せたくないけど僕は家から出れないから絶対に見せてしまう

なら、僕がここに来た時からある猫用クッションで天に昇ろうと思ったんだ

ああ眠い

ここに来てから色々あった


「聞いてよ!ミケ!あいつ、二股かけてたんだよ!!最低!」


こうやって泣いていた彼女に寄り添って眠ったこともあった


「聞いてミケ!上司に褒められたんだ!私が一番営業が上手だって!」


僕を抱き上げてくるくる回る彼女

上機嫌の時はラッキーだった

なぜって、餌が高級猫缶になるんだから


ああ、最後は彼女に看取られていきたいな


「ただいまぁーミケ!」

「ミケ?」


そうか、彼女がただいまって言ったら僕は真っ先におかえりって彼女の元に行ってたんだ

でもごめんね、眠いよ、今は眠いんだ


「ミケ?ミケ!ミケ!!」


ごめんね、声も出せないみたい


「ねえ、やだよ!ミケ!まだ一緒にいてよ!」


大丈夫だよ、君なら絶対に僕が居なくてもちゃんと生きていける

仕方ない君の心臓は僕よりもとってもゆっくり動くんだ

僕の方が先に疲れて止まってしまっても仕方ないよ


「ミケ、このクッションずっとお気に入りだったよね、新しいクッション買ってもそっちばっかりに座ってあの時の出費は痛かったんだから」


涙をポロポロと流しながら彼女は話す

そんなこともあったね

だって本当にお気に入りだったんだ

このクッション

君が最初に僕にくれたプレゼントだったから


「ミケ、私、大好きだよミケの事、今までも、これからも」


僕もさ、大好きだ、こんなに愛してもらって僕にはもったいないくらいだ

だから、僕は君にうんと幸せになって欲しいよ

ああ、眠いなぁ、眠りたくないなぁ、まだここに居たいなぁ


「ねえ、絶対に私も行くから、天国で待っててね」


そう言われたら、待ってなきゃ、今日はおかえりって言えなかったんだから

次は言わないと

そうだね、先に言って待ってるよ


「本当にずっと一緒にいてくれてありがとうねミケ、大好きだよ」


「ただいまミケ!」


私の新しい習慣、帰ったらあのクッションの上に置いたお花にただいまって言うんだ

そうしたら


「にゃ〜」


って聞こえる気がするから

多分ミケも言ってるよ絶対に


吾輩はミケである

世界一幸せな、幸せだった猫である

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