第18話 せめて今回だけでも安らかに
弟達に別れの挨拶をすますため、一旦自宅に戻ったリサが戻って来たらしい。
絢奈がリサを迎えにシェルターから出る。
数分後、絢奈に連れられリサが戻って来た。
「ゴメーン!連れてきちゃった」
テヘペロするリサの後ろには幼い兄妹がくっついてきている。
「別にいいよ?絢奈もいいと思って連れてきたんでしょ?」
凛夢が兄妹を見ながら話す。
兄が5歳、妹が3歳くらいだろうか。
ちょっとほっとしたようなリサが、兄妹に挨拶するように促している。
するとお兄ちゃんの方が
「
すると続いて妹も
「ルルでしゅ」
と答える。
「わー可愛い!ルルちゃんはいいとして、お兄ちゃんキラキラした名前だねぇ」
と言いながらティナが兄妹に頬ずりしている。
「まぁ親がね…キラキラしたのつけたがるのよ。私ん時もヤベーのつけられそうだったけど、じいちゃんばあちゃんが止めてくれたらしいわ」
と遠い目をしながら天井を仰ぐリサ。
その日はなるべく明日のことは忘れて、みんなでお泊り会みたいにワイワイして過ごした。
大騒ぎしたあと、みんな疲れてそれぞれ眠ってしまった。
すると凛夢と絢奈がカウンターテーブルの椅子に隣同士に座り、静かに話す。
「絢奈…今までありがとう。これから先は忘れちゃうけど…これからもよろしくね」
「凛夢さま。私と私の姉妹たちはこの牢獄を脱出するその日まで、いえその後も、凛夢さまにお仕えし続けることを誓います」
その言葉に凛夢が絢奈の髪を撫でる。
絢奈は気持ちよさそうに凛夢に身をゆだねる。
「じゃあそろそろ私たちも寝よっか。明日に備えて」
「はい」
その様子を、密かに起きていたティナがこっそり見ていた。
(…絢奈さんって…もしかしてそっちの気が…)
最後の夜なのに大いなる勘違いをするティナだった。
◇
そして迎えた記憶の最後の終末の日。
「えっと、ここシェルターだけど、隕石で吹っ飛ぶ予定?」
ティナが手を上げる。
「他にも相棒の管理者が考えてくれたんだけど、地震とか洪水とか…でも生き残るとそのあと他の管理者が放ったアデルにやられちゃうから…」
何とも言えない顔で凛夢が答える。
「あ~確かに、怪我でもして生き残ってそのあとアイツらに襲われでもしたら最悪だな」
と和人が頷く。
「何もできない自分が歯がゆい」
奏斗がこの期に及んでそんなことを言いだす。
「これは、運命なんだ。あなたが悪いわけじゃない。それに…」
凛夢が言いよどんでいるが、意を決したように
「それに、あなたは私たち人間を愛してくれたじゃない」
と潤んだ瞳で話す凛夢に、みんなが注目する。
「そ、それってどういう?」
ティナが凛夢に聞こうとしたその時、凛夢の頭の中に急に声が聞こえる。
『凛夢!まずい状況です。管理者のひとりにあなたの権能の存在がバレました』
「えっ?!」
シエナの焦った声に、凛夢は凍り付く。
(今すぐに行動に移すしかない)
『シエナ!今すぐ隕石を堕としてエデンをリセットして!すぐに権能を発動させる。計画を実行するよ!』
『…わかりました!』
「みんなごめん!管理者のひとりに私のことがバレた。今すぐに計画を実行するしかない」
凛夢がみんなの顔を見渡すと、みんな一瞬驚いた顔をしていたが、覚悟を決めたみたいだった。
リサの幼い兄妹だけが、どこか不安そうにしている。
「大丈夫だよ。大丈夫だから。姉ちゃんが一緒だからね」
リサが幼い兄妹を抱き、凛夢の方を見て頷く。
凛夢も頷き、自分の権能に意識を集中する。
凛夢の目が金色に光る。
凛夢の頭の中に、アーカーシャシステムから情報が流れてくる。
それは文字の羅列となって凛夢の目と頭の中に現れる。
≪
更に、
それは消して終わることなく、次から次へと無限に空間に書き綴られていく。
その神秘的な光景を、ティナをはじめみんなだまって見つめている。
「凛夢さん…きれい…」
小夜が呟くが、急激に眠気に襲われる。
それはティナ達も同じで、皆必死に耐えていた。
「こ…この眠気は…?」
必死に目を凝らしながら奏斗が叫ぶ。
「…みんな、これでお別れだね。その眠気は私のせい。みんな隕石で死ぬよりも、心地よい眠りの中でやり直した方がいいと思うの。だから次、目が覚めたらそれはまた新しい人生の始まり。結局繰り返すけど、今回くらいは安らかに終わってほしいと思うから」
凛夢がスキルを発動させながら皆を見渡す。
「そ、そんな!…り…凛夢は?どうなるの?!ひとりで、最期…迎え…て、さみ…し、い、んじゃ……」
ティナが最後まで何とか起きていようとしていたが、ついに力尽き眠りにつく。
その場にいた凛夢以外の全員が眠りにつき、静かになったシェルターの中でひとり、凛夢が呟く。
「…さみしくなんかないよティナ。みんなの魂の…欠片だけど、一緒にこの牢獄から旅立つんだから」
もう一度みんなの顔をゆっくりと眺める。
「半分は残ってしまうけど、残り半分が…いつかきっと迎えに来るからね。それまで、待っていて」
凛夢が
凛夢の背中には、ときおり羽根の形をした光が発光していた。
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