第16話 凛夢と絢奈の関係

 奏斗かなとの「魂の欠片を逃がして意味があるのか」という質問に対して凛夢りむが答える。


「いつになるかわからない…だけど、私の欠片があなた達の欠片と一緒にから出て、力をつけて必ず帰ってくる。だからそれまで待っていて…酷いこと言ってるのはわかってる。私もここに残る。私の欠片が、必ずあなた達を見つけて助けるからっ!だから信じて待っていてほしい!!」

 涙を浮かべ叫ぶ凛夢。

 これほど感情を露わにした凛夢はみんな初めて見る。


「…明日、終末を迎えれば、もう二度と過去…前世のことを思い出すことはない。だけど、また仲良くしてくれると嬉しいな…」

 下を向いて涙をこぼす凛夢を、ティナが抱きしめる。

「大丈夫…仲良くするよ。私が凛夢と仲良くしないわけないじゃない…だから、凛夢の欠片が力をつけたら、必ず私たちを見つけてね…迎えに来てね」

 と凛夢を抱きしめてティナも涙を流す。

 凛夢の権能の影響か、これからもこの地獄を繰り返すことを本能的に感じ取るティナ。


 抱きしめあう凛夢とティナ。

 すると絢奈に支えられながら立ち上がり、抱き合うふたりを包むように抱きしめる亜流夢あるむ

「私も入れて…、私も凛夢と…友達のみんなと一緒にいたいよ」

 すると、リサと玲音レオもその外から抱きしめる。


 涙目になりながら、

「いつも一緒…なんかハズいし…けど、心強いカモ」

「ひとりじゃないもんな…ホラお前らも!」

 リサと玲音レオが外から三人を抱きしめる、そして玲音レオに促されて奏斗と和人も…リサと玲音レオの肩に手を添えている。


「あ、絢奈お嬢様もどうだ?入るか?」

 と玲音レオがニカッと笑うが、

「いえ…私は結構です。あとで凛夢さまに…」

 と凛夢を見る絢奈。

 凛夢はちょっと困った顔をしながらも頷いていた。


「そもそも絢奈お嬢様と凛夢ってどういう関係な訳?」

 リサがビシッと指を指す。

「…人に指を差してはいけません」

 と絢奈が注意すると、

「あ、ハイ」

 とシュンとするリサ。


「まあいいでしょう…お答えします」

 と言って凛夢を見る絢奈。

 凛夢は無言で頷く。


 すると絢奈は淡々と説明し始めた。

 そもそも神荘院じそういん家は凛夢のサポートを目的につくられた家だということ。

 繰り返す生の中、必ず凛夢の側に神荘院じそういん家と絢奈がいたこと。

【管理者】と呼ばれる存在の内、凛夢と目的を共にする者がいるということ。

 神荘院じそういん家はその管理者がつくったということ。

 他の管理者は全て敵と考えた方がいいということ。

 終末の日は特定の日と決まっておらず、その時の他の管理者の気分により変わるということ。

 今回については、凛夢の同志である管理者が計画のため、前回と同じように強制的に終わらせるということ。

 更にはそれを偽装するため、世界中で犯罪者を捧げる状況が整っているということ。

 世界中にちらばった絢奈のクローンがそれをサポートしているということ。

 その他、ポツポツと出てくる質問は絢奈が全て答えていく。


「スケールが大きすぎて、実感が湧かない」

「ああ、前回の記憶がなかったら絶対信じないな」

 ティナと和人が感想を述べる。


 すると奏斗が

「…そもそもこの話を俺たちに説明して何か意味があるのか?どうせには覚えていないんだろう?」

 と凛夢と絢奈を見る。


「それは私の能力…権能と言うけど、それにあなた達のするためよ」

 と凛夢が答える。

 そしてみんなを見渡し、

「私の欠片が成長して、ここエデンにたどり着いたとき、あなた達が私の欠片を私と認識してもらうため…そのためにみんなと記憶を共有したいの」

 と続ける。


「何だかわかんねーけど、すんげー未来に凛夢が助けに来たときにアタシらが凛夢のことをってことだな!」

 玲音レオが腰に手を当てて言い放つ。


「概ねその通りよ」

 と目を閉じて微笑む凛夢。


 凛夢が奏斗を見つめる。

(終末の日は、奏斗君が生きているときに必ず行われる。多少の前後はするけど、シエナ以外の管理者は奏斗君が苦しんで最期を迎えるのを楽しんでいる。でもこれを本人に言うのは酷ね)


「…それで今回は、他の管理者にバレないように早めに終わらせるって私の相棒の管理者は言ってるんだけど…みんなどうやって最期を迎えたい?」

 凛夢が申し訳なさそうにみんなの顔を見渡す。


「凛夢が悪いわけじゃないんだからそんな顔しないで」

 ティナが心配そうに声をかける。

「でもひとつ、その凛夢の相棒の管理者さんと力を合わせて、他の管理者達をやっつけることは出来ないの?」

 ティナが凛夢を見つめると、凛夢は

「それは無理…無理なんだ」

 と俯いて呟く。


「それが出来るなら私もそうしたい。だけど、相手はこの星を創りかえて何度も自由に滅ぼすことが出来るような存在なんだよ?ひとりならまだしも、たくさんたくさんいる。私の相棒の管理者も昔より弱ってるし、私とみんなの欠片をバレないように逃すので精一杯なんだ」

 一呼吸おいて、

「それに…もしそんなことをすれば、この星の魂が全て刈り取られて、もう繰り返すことも出来なくなる。私たちは繰り返すことで管理者たちを楽しませて、なんとかその魂を繋ぐしか手段がないんだよ」

 凛夢が悔し涙を浮かべながら声を震わせる。


「悔しい…ね」

 ティナが呟く。


「だから、私は…が絶対にこんなことを終わらせる。いつか、必ず終わらせてみせる!」

 拳を握りしめる凛夢。


「でもでもよくわかんねーけど、その管理者とか言うのに、途中で私たちの魂?が刈り取られたらさ、もう友達にもなれないんじゃん?」

 リサがいつもの口調ながらも、少し震えた声で質問する。


「リサ、そのとおりなんだ。だから繰り返してるあいだは、私の権能がなるべく目立たずにみんなの魂を守る。私が救える魂は少ないし、例え狩れない魂があるとバレたとしても、”遊び星オモチャ”を創り直さないわけにはいかないから、小さなエラーとして放置してくれると思う。他の魂を狩ればいい話だからね」

 凛夢が答える。


 すると今度は、奏斗が

「そいつらは魂を狩ってどうするんだ?」

 と聞くので、

「あの黒い人、相棒はADELアデルって呼んでるけど、そのアデルを作るためみたい。なんでも管理者が便利に使うために沢山ストックしてるんだってさ。あとは単純に楽しんでるんだって…」

 と返すと、奏斗は

「そんなくだらないことのために…」

 拳を握り、歯をくいしばっている。








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