第14話
結衣が鏡の中に引きずり込まれ、陽菜が裏切り者だと告げられた後、私たちは言葉を失い、恐怖に震えていた。陽菜は、悠真の兄の友人の幻影に、顔を青ざめさせている。
「嘘よ……!私は…何も知らないわ!」
陽菜は必死に否定したが、幻影は、陽菜を嘲笑うかのように口角を歪ませていた。
「…お前が、俺たちをこの部屋に誘い込んだんだ…!お前のせいで、俺たちは…!」
幻影の言葉は、陽菜の心の奥底に隠されていた、ある記憶を呼び覚ました。陽菜は、その場にへたり込み、震えながら呟いた。
「…ごめんなさい…ごめんなさい…!」
陽菜の謝罪に、幻影は満足したかのように消えていった。私たちは、陽菜の行動に、恐怖と疑念を抱きながら、彼女に近づいた。
「陽菜…何があったの?」
私が尋ねると、陽菜は、震える声で話し始めた。
「…私は…この部屋の真実を、知っていたの」
陽菜は、悠真の兄の友人の妹だった。彼女は、兄が失踪した後、この学校の噂を調べるうちに、兄がこの「存在しない部屋」に閉じ込められたことを知ったという。
「兄は…私を、この学校に縛り付けるために、私をここへ誘い込んだ。そして、兄は…私を裏切った…」
陽菜の告白は、私たちにとって、衝撃的な事実だった。悠真の兄は、友人だけでなく、妹をもこの部屋に引きずり込もうとしていたのだ。
「…私は、兄を許せなかった。だから…私も、この部屋の噂を広めて、この部屋を喰らわせてやったの…」
陽菜は、そう言って、狂ったように笑い始めた。彼女の目は、憎悪と後悔に満ちていた。
「この部屋は…後悔を喰らう。だから…私は、この部屋に、後悔を喰らわせてやったの…!」
陽菜の言葉に、私は震えた。この部屋は、後悔を喰らうことで、その力を増していく。陽菜は、兄を憎むあまり、自らの後悔を部屋に喰らわせていたのだ。
その時、部屋の壁が剥がれ落ち、その奥から、血と肉の塊が、不気味にうごめいていた。それは、この部屋に閉じ込められてきた人々の後悔が、具現化したものだった。
「…りお…逃げて…!」
陽菜が、悲鳴を上げて叫んだ。私たちは、恐怖に震えながら、その場から逃げ出した。しかし、壁の血肉は、まるで生き物のように私たちを追いかけてくる。
私たちは、絶望と恐怖に打ちひしがれ、部屋の隅に隠れた。しかし、私たちは知っていた。この部屋から逃れることはできない。私たちは、この部屋で、自分の心の闇と向き合い、この呪いを終わらせるしかないのだ。
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