第5話
ドローンが捉えた映像に映っていた、血走った顔。それは、陽菜が調べていた「失踪した生徒」の写真に酷似していた。私たちは皆、言葉を失った。
「うそ……だろ……?ただの…ノイズだよな?」
健太が震える声でつぶやく。しかし、誰もがその言葉を信じていなかった。恐怖が、私たちの心に深く刻み込まれていく。
「こんなの……無理だよ。もうやめよう」
結衣は、目に涙を浮かべながら訴えた。しかし、悠真の表情は、どこか諦めているようだった。
「もう遅いかもしれない」
悠真の言葉に、私はハッとした。彼は、私たちが「存在しない部屋」に足を踏み入れた瞬間に、もう後戻りはできないことを知っていたのかもしれない。悠真は、どこか遠い目をして、誰もいない廊下の窓を見つめている。
その日から、私たちに奇妙な出来事が起こり始めた。
健太は、夜中にスマホの画面に、見たこともない人物からメッセージが送られてくる幻覚を見るようになった。メッセージには「なぜ逃げた?」「次は、逃さない」という、不気味な言葉が並んでいる。
陽菜は、図書館で資料を調べていると、誰もいないはずの書架の隙間から、何かが自分を見つめている気配を感じるようになった。気のせいだと思おうとしても、その視線は陽菜の背中に突き刺さる。
私は、学校の廊下を歩いていると、誰もいないのに、後ろから誰かがついてきているような足音を聞くようになった。振り返っても誰もいない。しかし、足音は止まらない。
私たちは、いつしか口を利かなくなった。それぞれが、自分だけに起こる恐怖と戦っていた。あのドキュメンタリーをきっかけに、私たちは完全にバラバラになってしまったのだ。
そんなある日、悠真が私を屋上に呼び出した。
「りお。お前も、何か起きてるんだろ」
悠真は、私の顔をじっと見つめていた。私は、正直に、最近の恐怖体験を話した。悠真は、静かに私の話を聞いて、言った。
「実は、俺もだ。夜中に、誰かの声を聞く。……『お前は、あの日、なぜ…』って、誰かが俺を責めてるんだ」
悠真は、言葉を濁した。しかし、彼の表情は、何か深い後悔を抱えているように見えた。
「これは、もう私たちがこのまま終わらせられる問題じゃない。もっと、深いところに、何かがある。この学校に閉じ込められてきた人たちの、声だ」
悠真の言葉に、私は震えた。私たちは、ただの好奇心から、触れてはいけないものに触れてしまったのだ。
「もう一度、行くしかない」
悠真の言葉に、私は驚いた。彼は、私たちがこの問題を解決するためには、もう一度あの場所に戻るしかないと言った。私は、怖くて足がすくんだ。しかし、このままでは、私たちはバラバラになって、いつか本当に「存在しない部屋」に引きずり込まれてしまうかもしれない。
私たちは、恐怖に立ち向かうことを決意した。そして、私たちは、知ることになる。悠真が、この学校と「存在しない部屋」に隠された、とんでもない秘密を抱えていることを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます