第一話から畳み掛けられるミルフィーユのようなエピソード。
とても良くできた構成に、カクヨム兼用読者は憧れます。
主人公と直子との位置付けがストレートに語られ、
二人の男女の物語だと認識すれば、
いきなり主人公の仮出所のシーンに。
一般の市民からしたら、縁遠いフィクションかと思えば、
自分に降りかかってもおかしくない、
青春の1ページの中で起こった悲劇であった。
ある意味、微笑ましい直子との出会い。
甘々な大学生活が描かれるが、
この後訪れるはずの悲劇にどのように繋がっていくのか、
気が気でならず、読み進めるのが止められない。
大学生当時の昭和と、出所後の平成が交互に描かれて、
種明かしが徐々に明らかになっていく。
古い映画とか、当時の世相を知る読者にとって、
そこから湧き上がる没入感は、この作品の魅力の一つ。
清らかな青春と、少し淀んだ青春を堪能していると、
やはり訪れた悲劇。
純粋すぎる直子の思いと、主人公の夢を追い求める行動と、
うまく折り合いがついていれば防げたはずの悲劇。
そして、その時はそうするしかないと思えた、別れ。
時は流れ、仮出所後に待ち受ける現実。
大どんでん返し!とも言えます。
優しい友人たちに囲まれて、ハッピーエンドと信じたいが。
カクヨムには、こんな名作が隠れています。
★4つとさせていただきます。
1998年、14年におよぶ刑務所での長い服役を終え、仮出所した主人公・川越コージ。彼が塀の外に出てただ一つ願うのは、大学時代に愛した「泣き虫の天使」こと、直子に再び会うことでした。
本作は、出所後の彼が浦島太郎のように90年代の社会(携帯電話やインターネット)に適応していく現在と、8ミリ映画作りに情熱を注いだ80年代の鮮やかな青春時代が交錯する、とてもドラマチックな物語です。
最大の魅力は、純真無垢なヒロイン・直子との甘酸っぱい恋と、それにまつわる主人公の深い「後悔と贖罪」の対比です!
男性恐怖症で田舎から出てきたばかりの純粋な直子との新宿デート(『E.T.』の鑑賞やディスコ体験など、80年代カルチャーの空気感が最高です!)の思い出が美しければ美しいほど、「俺のせいで彼女の人生を狂わせたのではないか」という現在の主人公の苦悩が痛いほど胸に迫ってきます。
8ミリカメラやビデオデッキといったレトロな映画製作の熱量と、重い罪を背負った男の人間ドラマが見事に融合した傑作。
昭和のノスタルジーを感じたい方や、切なくほろ苦い青春純愛ストーリーをじっくり味わいたい方に、全力でおすすめしたい作品です!