伝言ブルース

鏖(みなごろし)

伝言ブルース

俺は新宿の外れのバーでブルースを歌って日銭を稼いでいる。


店は狭く薄暗い。


客と言えば、ヤクザ、半グレ、ドラッグディーラー、ポン引き、娼婦、ホスト、キャバ嬢、オカマなど。この街ならではの客層だ。


しかし、客たちは騒いだりもせず、静かに俺の歌を聴いている。


俺は大体ブルースの古いスタンダードナンバーを歌う。


しかし、月に一度くらいリクエストが来る。


リクエストは決まって俺のオリジナルナンバーだ。


今日も目つきの悪い男がリクエストして来た。


リクエストの紙と一緒にチップも弾んでくれる。


今日の曲はこうだ。


〜裏ぶれた


2ndセカンドストリート


クロスロードで


あいつに会ったのなら


伝えてくれないか〜


曲が終わると、パチパチと乾いた拍手が鳴る。


そして決まって、いつもの席の黒ずくめの男が席を立ち店を出ていく。


次の日、2丁目大通りの裏の十字路で


ドラッグディーラーが殺された。


俺が俺の歌を歌うと、


必ず翌日、誰かが死ぬ。


俺の歌は何かの伝言なのか?


まぁ、どうでもいいが。


ところで俺のオリジナル曲は30曲ある。


どうだい、よかったら聴きに来ないか?


終。

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伝言ブルース 鏖(みなごろし) @minagorohsi

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