北国の列車冷房なくて良し

客先のクレーム対応


営業マンだけでは「誠意を見せられないから」

君も同行してくれ


という理由で


休日の夜に電話で指示をうけ


翌日の早朝から千歳空港に飛んだ


空港で担当の営業マンと落合い、列車で向かう、

列車の中でレクチャーを受け、謝罪のストーリーを頭に叩き込む


ふと窓の外を見ると、そこには北の大地の原生林が広がっており

針葉樹林体なのかな、樹木も全体に尖っているような印象を受ける


もしかしたらヒグマもいるのかな、とか

いやキタキツネかなど

想念は勝手に動き回る


最寄りの駅でおり、急に現れる近代的な北の都市に一瞬目眩を感じるが、

営業マンについて客先に向かう


客先に到着、アポの時間には間に合う、

応接に通され、

やがて客先の責任者、担当者が現れる


早速営業マンといっしょに深々と謝罪する

(事前に打ち合わせしておいて良かった)


謝罪すると意外にあっさりと赦され

拍子抜けするが


考えて見れば、客のほうが遥かに大会社で余裕があるのだ、

こんなことで時間を取られたくないのかもしれない


うまく客先との関係もとりなされたと思われ、

客先のビルを辞すると

地元の営業マンと共に安堵し、

途中で別れて、

トンボ返りで飛行機に乗る


津軽海峡を空路で渡り

広葉樹林の広がる

温帯モンスーン地帯に戻る


そういえばあの列車に冷房なかったな、

と帰りの空路で思い出しながらしばし仮眠した


(Fin)









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俳句と散文 「冷房」 よひら @Kaku46Taro

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