もういいだろ魔法少女は
白川津 中々
◾️
「ちょっと魔法少女ものとかやっちゃう?」
番組会議における上司の発言に俺は内心ブチ切れていた。魔法少女てお前、なめとんのかという話しである。
直近で流行っていたのが五年前。次が十年。そのまた次が十五年と、確かにスパン的にはベストタイミングだが、問題は山積み。王道からブラックコメディ。シリアスに男魔法少女まで過去にやり尽くされている。加えてプリのキュアだのパラだのマジだのアイだの変身系アニメは競合が強すぎる。ここを掻い潜りつつ、コアなファンに認知させ爆発させるのは至難だし、開始から三話までには作品の世界観に引き込まなくては売れ筋とはならないのだ。クオリティを維持しつつ、盛り上がり拡散する要素を、更に魔法少女ものにおける今世代ブームの火付け役になるようなパワーを有しなくてはいけない。それをさらっと、しかも俺のような三流ディレクターに「そろそろプロデューサーやっちゃいなよ」などと軽く任せるあの無責任ぶり。さすがに看過できないが笑って引き受けるのも仕事であるから、なんとかして進めなくてはならかった。方々を駆け回り、最近のトレンドや次に来るであろうブーム。人気、実力派の脚本家をピックアップしてデザインも有名漫画家を抑えられるようセッティング。GOが出ればSTARTできる形で企画書を提出したわけだが……
「いやぁ、めっちゃいいんだけど、重いね。悪いんだけどさ、もっと軽くでいいんだよ軽くで。どうせワンクール凌げればいいんだから、その辺の若手声優使って面白い事言わせときゃいいのよ。そっち方面で修正よろ〜」
「……」
ふざけるな馬鹿野郎。
そんな言葉を呑み込み、指示通りの調整を行った。上司の言葉を無視して独断専行する力があるならとっくに昇進している。ここは脳死で着手する方向を選択。言われた通りの仕事をして成功したら俺の手柄。コケたら上司の責任にしてやればよいのだと開き直り企画が開始した。
そうしてできあがった無責任魔法少女キャプテンタイアードはそこそこの売上を見せ二期が決定。なお、没になった構想案をブラッシュアップして小説投稿サイトに投げたところまったく読者からの反応がつかず終了となった。上司の指示に従っておいて、本当によかった。
もういいだろ魔法少女は 白川津 中々 @taka1212384
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