2035

宮上 想史

第1話

1 解雇


「温水さん、いままでありがとうございました!」

どこかのビルのどこかの階のどこかのオフィス。職員が皆で拍手をしていた。

 女性社員が一人、中年男性に花束を渡す。

 男性は目に涙をためている。今にも泣きそうになっていた。

 今日で会社を辞めることになった。円満退社。というよりも、クビだった。入社して30年、掃除一筋でやってきた。    

 中年男性――温水がオフィスを出て廊下を進んでいると、ロボットが通路を掃除しているのが目に入った。他にも沢山の二足歩行ロボットがいる。

 2035年、世の中はロボットだらけになっていた。どこもかしこもロボットだらけ。ロボットが職場に導入され始め、あっという間に仕事は奪われていった。 

 最初はロボットに仕事を教えていたが、すぐに人間と同じ仕事ができるようになっていた。さらには人間と違い休むなんてこといらないのだ。そりゃあ、人間なんて必要なくなるのは当然の成り行きだった。

 

 お昼。温水は公園でおにぎりを食べてお茶を飲んだ。

「これから、どうしよっかな」

 温水は空を見上げる。鳥が飛んでいた。

「自由だと逆に困っちゃうなあ」

 目の前にロボットが来る。

「ゴミを回収します」

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