第二十話「逃げない。守ると決めたから」
夜、アパート前。
帰宅する植村さんの前に、立ちはだかる影。
「……久しぶりだな」
低い声。煙草の火が赤く瞬く。
——元旦那。
植村さんの表情が凍りつく。
「もう、やめて……」
「やめられるかよ。お前は俺の女だろ」
腕を掴まれそうになった瞬間。
「やめろ!!」
俺は飛び出していた。
*
「……北山さん?」
「触るな! 彼女は嫌がってる!」
「はぁ? 誰だテメェ」
「隣人です」
声が震える。でも視線は逸らさなかった。
「ふざけんなガキが!」
元旦那の腕が振り上がる。
反射的に俺は立ちはだかり、胸ぐらを掴まれながらも叫んだ。
「俺が守るって決めたんだ!!」
一瞬の静寂。
元旦那の目が細く光り、植村さんが息を呑む。
*
「——ほぅ。面白ぇじゃねぇか」
男は不気味に笑うと、力を抜いて手を放した。
「また来る。次は覚悟しとけよ」
吐き捨てて闇に消えていく。
その場にへたり込んだ俺。
震えていた。でも——逃げなかった。
「……大丈夫ですか」
植村さんの声が震えていた。
俺はなんとか笑って答えた。
「俺が隣にいる限り……あなたは一人じゃないです」
その瞬間、植村さんの目に光が揺れた。
*
遠くで猫丸がべすを連れて見ていた。
「おう、兄ちゃん……ちょっとは男になったな」
「ワン!」
夜空に夏の風が吹き抜けた。
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