第2話「ギャップ萌えとかそういう次元じゃない」

 慌てふためく中年の男をよそに、ローブの女の子はいたって平静だ。

 ほら、直立したままぴくりとも動かない……。


「えーっ、アタシの使い魔この43点みたいな顔面のやつなん?」


 誰ですかこの子が平静とか言った人。

 撤回してください。

 誰が43点だよ、泣くぞ。


「ん? ウケる、あんた佐次田じゃん、うわ、なんで気づかなかったんだろ!」


 ローブの女の子が、フードをふぁさっとおろした。


「うわぁーっ! 岸辺! 岸辺じゃねーか! おれに顔面43点、性格18点と言い捨て二ヶ月前に行方不明になった岸辺梨央じゃねーか!」

「何その説明口調キッショ。てかマジで佐次田じゃん。え、なに、あんたも死んだ?」

「は? おまえ死んだの?」


 行方不明って聞いてるんだけど。


「うん。なんか塾帰りに通り魔に襲われてぇ〜。あんたは?」

「トラックに轢かれた」

「アハハ、異世界転生モノの導入かよ!!!」


 なんだろう、動じてはない。

 すごく平静だ。平静だけど。

 なんか、違くない!?


「てかさー、センセ」

「はいっ?」


 中年の男が、岸辺につつかれて裏返った声を出す。


「コイツが使い魔ってことになんの? コレ」

「ですね……」

「え、おれ岸辺の使い魔なん? えっ、イヤなんだけど!!!」

「あたしもイヤだよ、佐次田が使い魔とか」


 だめだ、もうなにがどうなっているのか理解できない。

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