「女の子に無条件でチヤホヤされたい」と思った直後に異世界転移したが現実はそんなに甘くはないようだ。

西貞

第1話「本当に転移するとか思わないじゃん」

 クラスの女子いわく、おれは顔面43点、性格18点らしい。

 小学生の頃は、よくモテた。

 だって足が速かったから。ドッジボール強かったし。

 高校生ともなると、もはやエースで四番とかいう肩書は、モテにおいて意味をなさないらしい。


「なんのために頑張ってきたんだよ、チクショー」


 それはもちろん、野球が好きだからに他ならないのだけど、モテるサッカー部のエースストライカーとか、モテる剣道部大将を見ると泣きそうになる。

 おれとそいつらってなにが違うの?

 やっぱり顔? 性格?


「あーあ、異世界転生とか転移とかして女の子に無条件でチヤホヤされてぇ……」


 甲子園出場決まったのに、おれ、なに言ってんだろう。

 乾いた笑いがこぼれる。

 エースで、四番で、甲子園球児。

 これ以上、何を求めるって言うんだろう。


「あ、ネコ……」


 ふらっと足を踏み出した。

 赤信号の横断歩道に。

 反対側の歩道にいるネコに向かって。


「__ぁ?」


 トラックが、迫って、迫って、迫って、迫って。

 衝撃さえ感じる暇もなく。

 おれはぐちゃぐちゃの肉塊になった。


 はずだった。

 おれは、魔法陣の上に座り込んでいた。目の前には、長いローブの女の子。


「えっ、なんか人、えっ、これ使い魔召喚だよね!?」


 ローブの女の子の、すぐとなりに立っていた、中年の男が、おれを見るなり叫んだ。


 なんだろう、すごく……。おれの頭は冷静だ。

 けど、まぁ、わかんないものは、わかんないよねって話。


 ただ、おれの輝かしい青春の一ページが失われたことだけは、よくわかった。

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