変わる君と落ちる僕

@kitAkit

第1話

「あたし、ほんとはアンタのことずっと好きだったの、だから付き合ってくれない?」


僕はこの言葉をずっと待ち望んでいる…


いや僕から想いを伝えなきゃ、待ってるだけじゃ…


***


僕の名前は青山陽向。


普通のありきたりな名前だが結構気に入っている。


今僕は公立の高校の1年生だ。つい先月に入学式に参加したばかりで、友達が出来るわけがなく、休み時間はぼっちになってしまっている。


目立ちたくないため、高校デビューをしようとは思わないが、さすがにぼっちを楽しめるほどメンタルは強くない。

だから誰かに話しかけたいが今まで自分から話を出来なかった僕には難しすぎる。


いつものように休み時間を潰すようにいつも持ってきている小説を開こうとした。


「お前、なんの小説読んでんの?」


田辺凛久。

急に話しかけてきた同じクラスの同級生だ。

いつもクラスの中心のグループに居て僕は

関わることはないと思っていた。


よく顔を改めて見てみると、左の綺麗な黒目がすべてを引き込むようで、髪で隠れている右目も見たいと思わせてくる。肌は綺麗な純白で目が離せない。


「おーい、聞こえてるか?」

「あ、ごめん…これはファンタジー系のライトノベルだよ」

「やっぱりファンタジーは夢あって読んでて楽しいんだよな!」

「ほんとにそうだよね」


初めて僕の好きな小説の話題で楽しく話せて仲良くなれた気がする。何故か話している時胸がドキドキしていたが、好きなことを話して興奮してしまったんだろう。


明日も話せるだろうか…



次の日


今日からは部活動の仮入部の期間だ。

田辺くんとは今日は話せなかった。やっぱり話せたのは偶然なのだろうか。


僕は今日の放課後、文芸部に仮入部をする予定だ。そこでは、初めに部室で活動紹介をするらしい。




部室に入ると、狭いながらも棚がすべての壁面にあり、その中に様々な小説や詩集、漫画などいろいろなものが置かれていた。中央には向かい合うように机と椅子が置かれていた。


そこには顧問の先生と先輩たち、仮入部の同級生が数人いた。


その同級生の中に先輩と喋っている田辺がいた。何を喋っているのかは聞けなかったが、何故か教室での雰囲気と違っているように感じた。



少しして、顧問の先生と先輩たちから活動の説明があった。ゆるく部活動をやりたい僕にうってつけの部活だった。


中学生の頃は好きになりきれない部活を無理やり続けて、疲れたから高校ではマイペースに楽しめそうだと思った。



その次の新入生の自己紹介のときに僕は度肝を抜かれた。



田辺凛久の自己紹介のときだ。

「あたしは、新入生の田辺凛久っていうの、この名前は堅苦しいからエリザベスって呼んでね!よろしくね〜♡」


昨日喋ったあの男子高校生らしい口調の見る影もなく、完全にオネエの口調で自己紹介した。他の新入生や先輩たちは呆然としていたり、ノリに乗っていたりと反応は人それぞれだった。


そこで僕は大きな驚きと同時に心臓がはち切れそうなくらいにドキドキしてしまった。凛久から目が離せない。なぜだろう?オネエが好きというわけではないはずなのに…



僕は田辺凛久のオネエの口調を聞く度にドキドキしてしまって、それ以降の話はもう覚えていなかった。


この時から僕は、田辺凛久に心を奪われてしまった。


























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