トラック4:瑠奈のベッドで好き

 //SE 壁越しにドライヤーの音


 //SE 冷凍庫を開ける音、数秒後に閉める音


 //SE 近づく足音(裸足なのでペタペタと)


「アイス、食べるよねっ?」


「良かった。味はソーダで大丈夫?」


「だよね。なにせ、君の好みは知ってるから。ちなみに私もソーダ」


「昔から君はソーダ味好きだったよね。その影響なんだよ、私がこれ好きなの」//アイスを齧る


「ん~! やっぱりお風呂上がりのアイスは格別だねっ!」


「こういう優雅な時間、案外久しぶりかも。普段はお風呂上がりのアイスとか食べる時間ないからね……」


「こういう土曜日とかも、友達と遊んだり、あるいは自分のために時間を使ってたりすると、案外ゆっくりする時間もなかったりするんだよね」


「なんだか優雅すぎて、貴族になったみたい。爵位とかよく分かんないけど」

 

「っと、アイスも食べ終わったわけだし……」


「そろそろ寝よっか」


(場面転換。部屋を移動する)


 //SE 扉が閉まる音


「ん? 一緒のベッドで寝るのは嫌?」


「だよね。昔もこんな感じでお泊まりしたもんね」


「それに、そもそもお泊まりといえば一緒に寝るもんじゃない?」


「ま、まぁ確かに、同姓としかしたことはないけど……」


「そーゆーのは気にしたら負けってことで。ほら、ベッドに入ってよ」


 //SE 二人がベッドに入る衣擦れの音(瑠奈は主人公の右)


(独り言のように)

「んっ……シングルベッドだと、ちょっと狭いかも。寝返りなんて以ての外だし。数センチ動いただけで身体当たっちゃう……」


(ツンツンした言い方で)

「……ね、ねぇ。なんでこっち見てるわけ? 私の顔に何かついてる?」


「じっと見られると、恥ずかしいんだけど……一応すっぴんなわけだし」


「だから、私が慣れるまであっち向いてて。いいからっ!」


(少しの間、瑠奈の声は背後から聞こえる)


「んん……えっと、何の話、する?」


「ほら、お泊りといえば寝る前にお話するじゃない? 例えばそう、恋バナ——とか」


「私ずっと気になってたんだよ。だから、その……」


 //SE 寝返りをうつ音


(耳元で甘えたような声)

「君、彼女とか、もしくは好きな人とか……気になってる人とか、いないの?」


「っ——!? んんん!?」


「い、いるって言った……? いま『いる』って言ったよね……!?」


「へ、へぇ……いるんだ……」


(からかうように、元気よく)

「それってぇ——私とかっ?」


「ちょ、『さぁ?』は卑怯でしょ!」


「むぅ……人の心を弄ぶなんて酷い男。好き41っ」


「じゃ、誰かの恋バナしよ? そっちのクラスのカップルの話とかないの?」


「ふむふむ……え、すごいね。夏休み前に二組もカップル出来たんだ」


「あ、なるほど。一組は相手の子が『来る者拒まず』な感じだったんだ。そんで、もう一組は相思相愛、なるべくして……くぅ、うらやましい~~~!」


「そりゃ、今を生きるJKとして、恋を羨む気持ちは標準装備だからね!」


「逆に、君は羨ましいとか思わないの? 憧れる気持ちは?」


「ない……? どうして?」


「『憧れるのをやめた』ってマジで言ってる?」


「自分が辛くならないように、かぁ……自衛ってわけね」


「……私たち、いつ付き合えるんだろうね」


「あっ、ご、誤解しないでよ。互いに、恋人ができて付き合うとこまで行くのはいつかって話」


「私も気づけば彼氏いない歴イコール年齢の女になってしまったわけだしさ……」


 //演技依頼 あくび


「……なんか、そろそろ眠いかも」


(以降、眠気により次第に呂律が回らなくなっていく)


「私も、付き合ったらイチャイチャするのかなぁ……。まず手を繋いで、ハグして……」


「キ、キス、とか……しちゃったりして……」


「私の方が身長低いし、ちょっぴり背伸びしながらになるのかな」


「ハグは……どうなるんだろ。ちょっと試させて?」//最後から抱きつくバックハグ


「ぎゅーっ♡」


「ふふん。背中、案外硬いね。やっぱり君も男の子なんだ?」


「女の子のはやらかくて、ぷにぷにしてるの。君には分かんないだろうけど」


(覚悟を決めたように)

「ねぇ」


「私以外に、こんなこと言ってくれる女の子なんかいないでしょ……?」


「私以外に、君の全部を受け入れてくれるような女の子なんかいないもんね……?」


「むふふっ。じゃあ、私のものにしてもいいよね」


「ふたりきりだし、何も気にしなくていいよね」


(以下は右耳に)

好き42


好き43


「大好き44っ」


好き45……だよ」


好き46


好き47っ」


好き48……」


好き49!」


好き50……!」


「大好き51っ」


「もぉ、そろそろこっち向いてよっ。その顔みーせて?」


「……これで、本気って分かった?」


「か、からかってないもんっ」


「全部——本気だもん」


「付き合った恋人たちって、みんなこんなことしてるんだもん。私だって女の子だし、憧れちゃったというか……」


「知らない世界、見たことない光景……だから、私もしてみたくなったの……っ」


(以下は左耳に)

好き52っ」


好ーき53っ」


「えへへ、顔あかーい。可愛いじゃん」


「その顔好き54ぃー♡」


 //演技依頼 左耳に息を吹きかける


「ふへへっ♡」


「……んね、今……ドキドキしてる?」


「私はね、すっごく……してるよ」


「聞いてみる?」


「えっと……どのあたりがいいのかな?」


だいご、ろっかん(第五肋間)? あぁ、左胸のところなんだ」


「——えいっ」//主人公の頭が瑠奈の胸にくっつけられる


 //SE 心臓の音


「ふふん、どう? 心臓の音、聞こえる?」


「ドクドクって、鼓動早くなってるよね。ドキドキしてるもん」


「ふぅ……なんだか落ち着く。不思議だよね、ドキドキしてるのに落ち着くだなんて」


「でも、幸せだもん。ずーっとこのままがいいなって思うくらい、リラックスしてるんだよ」


好き55


好き56だよ」


好ーき57


「ふふ。ほら、ちょっぴり早くなったでしょ?」


「だって、好きって言うの、恥ずかしいんだもん」


「でも、今なら言えるの。なんでかな」


「う~ん。もしかしたら、君のことをぎゅってしてるからかも? 逃げられないから、私も追いかけなくていい。だから安心して——」


(左耳に)

「—— 好き58っ♡」


「って言えるんだよ? ふふっ」


 //演技依頼 あくび


「ん~、眠い……にゃあ……」


(以降、寝息)


「すぅ……」


「むにゃむにゃ……」


しゅき59ぃ……うぇへへへ……」


「にゃぁ~……」


「すぅ……」


すき60……」


「ぜったい……離さないんだから……」



=====


おやすみなさい皆様。


さて、次回は最終回!

原点回帰の学校編ですよ!

残り四十回の死のカウントダウン、果たして主人公はどうなっちゃうのか!!!

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