誰にも届かない祈り

優優

第1話 神がいるなら…

愛する人。

もう二度と会えない人。

あの頃には戻れない、大好きな人。


抱きしめたくて、触れたくて、たまらない。

だけどもう二度と、前にすることはできない。


今日も元気そうで、なによりだ。

けれど――心の底から笑ってほしい。

仮面をかぶって生きる、大切な大切な俺の弟。


もう俺たちには、囚われなくていいんだ。

好きに生きてくれ。

髪の毛も、化粧も、笑顔も、見れるのは嬉しい。

でもお前が無理するのは、俺たちは望んじゃいない。


お前が生きていれば、それでいいのに。

俺たちのことが足枷になっている。

いつまでも過去に囚われている、俺たちの弟。


忘れてくれていいのに――。

元気に生きてくれたら、それだけでいいのに。


…なぁ、神ってもんがいるなら、どうにかしてくれよ。

あいつを助けてくれ。

俺たちは転生なんてしなくていい。

もう見守れなくたっていい。


だから――

あの子を、弟を、自由にしてくれ。

俺たちの呪縛から、解放してやってくれ。


頼むよ。


「…生きててくれてありがとう。」

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