【声劇台本】華の金曜日

夕緋

華の金曜日


護(まもる):「華金」も知らない真面目な大学三年生


漣(れん):人付き合いが上手い(ように見える)護の同級生





漣:まーもーる!


護:うおっ……と。急に背中叩くなよ。ビックリするだろうが。


漣:そんな強く叩いたつもりないけど。護は今日も空き教室でお勉強?


護:まあな。


漣:じゃあ君に良いことを教えてあげよう。……今日は華金だぜ?


護:……はな、きん?


漣:……え、何その反応。まさかお前”華金”が分からないとか言わないよな。


護:いや、そんな一般常識みたいに言われても分からないけど。


漣:うっっっそぉぉおおお!!! お前そういうところ致命的に抜けてるよな。今までどうやって生きてきたの?


護:そんな自分の人生を疑われるほどヤバいのか。”はなきん”を知らないのは。


漣:ヤバイ。激ヤバ。だって華の金曜日だぜ? 土曜日曜と休みがあるのに甘えて大人たちが飲み明かし、学生たちはちょっと勉強をサボる華金を知らないなんて人生損してる。


護:俺、”人生損してる”って言うやつの言葉は信用しないようにしてるんだ。


漣:おいおいそんなこと言うなって。マジで楽しいからさ、一緒に飲もうぜ。


護:金曜日であることに大した意義を感じないんだが……。


漣:帰る頃には分かるって。とにかく行こうぜ。俺腹減ったぁ~


護:まあキリの良いところまでいったし……。仕方ないな。行ってやるよ。メンツは?


漣:俺とお前


護:……だけ?


漣:そうだけど。なんか問題ある?


護:いや、ない、けど


漣:じゃあ行こうぜ~! 俺今日は焼き鳥の気分!


護:お、おう。って待てよ! まだ荷物しまってないだろうが!



(焼き鳥屋にて)


漣:もっかい聞くけど本当に焼き鳥屋来たことなかったの?


護:お前に会うまで居酒屋も行ったことなかっただろ。同じだよ。


漣:ほんと信じられねーわ。誘ってくる友達とか居なかったわけ?


護:俺がお前に出会うまでの大学二年間どう過ごしてたのか知ってるだろ。


漣:まあな。ガリ勉ってこういうことなんだなって思った。


護:お前な……。


漣:まぁまぁ、今は俺という友人がいるんだから拗ねないでくれ。


護:友達ができたのがお前のおかげなのは分かってるから否定できないのが悔しい。


漣:あっはっは! 素直でよろしい。適当に頼んでいいか?


護:おう。何もわかんねーから頼んだ。


漣:よし、任せろ。


護:今どき何でもタッチパネルで注文できるんだなぁ。


漣:便利だよな。店員さん呼ばなくていいし。


護:……お前はそういうの厭わないタイプかと思ったけど。


漣:あー、そう見える? 普通に気ぃ遣うわ。


護:ふーん?


漣:まあとりあえずこんなもんだろ。あ、ビールでいいよな? お前いっつも居酒屋の初手ビールに枝豆だし。


護:いいよ。


漣:よーし、注文完了!


護:……なあ


漣:ん? どした?


護:どうして俺だけ誘ったんだ?


漣:え、何。まだ何か疑問なの?


護:いや、疑問だろ。そりゃたまには2人で飲んだ時もあるけど、それ別のメンバーがドタキャンした時だけで、最初から2人って初めてじゃん。


漣:……言っただろ。今日は華金なんだよ。


護:……それがどうしたんだよ。


漣:日頃の鬱憤うっぷんを忘れてパーっと飲み明かしたいの。そういう時の適任だろ? お前は。


護:そんな覚えはないけど。


漣:いーや、適任なんだよ。なんてったってお前は素直だからな。


護:それがどう関わって来るんだよ。


漣:余計なこと考える必要が無い。


護:余計なこと?


漣:そ。考えたくもないこと考えなくて済む。


護:……よくわかんねぇ。


漣:わかんなくていいよ。その方がありがてぇし。それよりほら、ビール来たし乾杯しようぜ?


護:ん。


漣:それでは華金を祝してかんぱーい!


護:かんぱーい




漣:っはぁー! 食った食った! 満足!


護:あんだけ食ったらそりゃ満足するよな……。


漣:え? そんなに食べてた?


護:俺の2倍くらい食ってなかった?


漣:2倍は言い過ぎだろ!


護:お前俺が冗談言えないタイプだって知ってるだろ?


漣:知ってるよ。だからこそこえーよ。本当に2倍食ったんだろうなって。


護:あの後に白米を食べられるとは思わなかったもんなぁ……


漣:代金お前の2倍出すからこの話はもうやめてくれ


護:仕方ない。やめてやろう。


漣:ありがと。……で、どうよ。これだけ食って飲んだ後であと2日も休日があるって思うと、そう悪い気分じゃないだろ?


護:あー、確かに。なんつーかゆとりが持てるな。


漣:そ! 余裕が出来て何でもしていい気分になる。それが華金。


護:何でもはしちゃいけねー気がするけど。


漣:細かいことはいいだろ! 勉強漬けの護くんも今日はちょっと力抜けたよな?


護:まあ、そうだな。別に勉強が辛いとかないけど。


漣:お前がそう思ってても意外と疲れは溜まってるんだぜ? たまには羽根を伸ばして休めよ。


護:ん、ありがと。お前は?


漣:ん?


護:お前はちゃんと羽根を伸ばせたのか?


漣:おう。お前のおかげでバッチリ。


護:やっぱ俺のおかげなのは分かんねぇけど……。まあ役に立てたなら良かったわ。


漣:これからもよろしく頼むよ。

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