迷い子、あなたはどこに迷う?

東井タカヒロ

迷い子、あなたは見たの?

 道に迷った。

 よくある市街地の中を通り、駅へ行こうとした。

 だが、道に迷った。


「あ――充電切れ」

 今朝寝落ちしたせいで、肝心のスマホは充電切れ。

「マジでどうするんだ、これ」

 とりあえず直進を続ける。

 しかし、いつまで経っても、壁に当たらない。

 どこかで壁に当たるものだ。


 だが、先を見ても、行き止まりがない。

「はは、おかしいだろ、これ」

 俺は横道も見てみるが、直進と同じく、先が見えない。


 スっ――。

 落ち着け。こういうのは何かあるもんだ。

 ここは市街地だ。なら、家に入れば何か変わるんじゃないのか?

 今の通路に、入り口はなく、塀が拒んでいる。

 なら、横道に――。

 ……おかしくね?


 おかしい。左右どちらの横道を見ても、入り口がもない。

「後ろの道は!?」

 1本後ろの道も横道を見る。


 無情にも、あるのは、街灯と塀だけだった。

 「は?」


 ……いけない。冷静に。

 面接官にもそう言われただろ。

 仕方ない。他の手を考えるか。


 塀を登って、家の中に入るか。

 俺はなんとか、塀をよじ登り、家の敷地に入る。


 カーテンがしまって、中が良く見えない。

 玄関から入るか。

 だが、1周しても、玄関はない。


「おいおい!それはないだろ!」

 俺は持っていた鞄を、窓に投げつけた。

 すると、カーテンの隙間から光が漏れているのが分かった。

 

 息をのみ、中を除く。

 ただ、部屋の明かりが1つポツンと照らされていただけだった。


 ――家具も、何もなく。ただ、光が部屋を照らしていた。

 俺は思わず絶句した。


「やぁ、うちに用かい?」

 

 

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迷い子、あなたはどこに迷う? 東井タカヒロ @touitakahiro

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