出会い
1923(大正12)年 9月末
未だ大震災の爪痕残る東京市にタイムスリップして、震災で家族を亡くした駄菓子屋のおばちゃん、大山ヨネさんに拾われ世話になる事になっためぐるは、再び学校に行くにしても、この時代の学校に時原めぐるなんて名前の在籍簿はあるはずがなくて確認が取れずに、もういいですと、そのままヨネおばちゃんのお店を手伝う事になった。
「本当に学校はいいのかい?女学校卒業の肩書は安くないんだし」
「まあ勉強ならここにいたままでも自分でできますから。ヨネさんにもこれ以上お世話になるわけにはいきませんよ」
「そんなこと子供が気にするもんじゃないよ・・・そういやめぐるちゃんの時代には金持ちじゃなくても、皆が中学やら女学校やら行けるのかい?」
「はい、まあ基本的には・・・小学校と中学校9年間義務教育で、女学校とか言うのもなくて高校も大学も男女共学が当たり前ですし、国からの助成制度もありますしね。ていうかヨネさん、本当に私が未来から来たって信じてくれたんですか?」
「まあ、あの洋服も上等な生地だしね・・・それにお母ちゃんね、めぐるちゃんはそんな嘘つくような子には見えないよ」
「ヨネさん・・・」
ヨネの気持ちに応えてお母さんと呼んだ方がいいのかと思うめぐるだが、未来に残してきた本当の母親の顔がちらつきなかなかそうは呼べずにいた。
そして、お店の仕事にも慣れてきて、近所のお客さん達にも顔と名前を覚えてもらった頃、めぐるにある出会いがあった。
「あの、めぐるさん、今度のお休みに俺とランデブーしてくれませんか?」
めぐるにはそのランデブーという言葉の意味は一瞬分からなかったが、その相手の顔から、いわゆるデートのお誘いか!と合点が行った。して、確かに彼はこのところよくお店に来てくれていたが、めぐるもまさか急にそんな事を言われるとは思わず、少しフリーズしてしまう。
「・・・あ、あの、おばちゃんが許してくれれば・・・・・・」
とりあえずおばちゃんをだしに取り繕おうとすると、そのおばちゃんが出てきて戸惑うめぐるにかわってあっさり許可してしまった。
「いいじゃないか、震災からこっち娯楽も何もないんだし。若いうちにしかできねえ事もあらあよ」
「おばちゃん・・・じゃ、じゃあ今度の日曜日に・・・」
「ほんとですか!ありがとうございます!」
と、いうわけでランデブーの約束を取り付けたものの、現代でもそんな彼氏どころか恋愛経験、いや男子と2人きりで出かけたなんて経験すらない純情少女のめぐるはどうしよどうしよと、どっかのバカでかい森に住む子豚のようになってしまう。
「未来に許嫁とかいなかったのかい?」
「いやいや確かに未来じゃ男女で同じ学校とかも普通ですけどめぐは・・・めぐがそんな男子にモテる(こういう言葉はこの時代には既にあるらしく普通に通じる)はずないし」
「めぐるちゃん可愛いらしいのにねえ・・・なら接吻のひとつもした事ないのかい?」
「ええ、17歳にして恥ずかしながら・・・」
「別に17歳なら普通だと思うけども・・・めぐるちゃんの時代じゃその歳で接吻した事ないのは遅いの?」
「はい、早い子は小学校でファーストキッスなので遅い方だと・・・」
「小学校・・・やっぱ未来は色々と進んでるんだねえ」
「そういやおばちゃん、めぐるがまだ子供だからってのもあるだろうけど、学校の事とかそういう事とかじゃなくてさ、未来の日本て国がどうなったかみたいな事聞かないの?」
「・・・どうせ知ったって、私が生きてんのは今なんだから関係ないさね。それに聞かなくたってめぐるちゃん見てたら日本人もそう変わってないって分かるよ」
「そうですか・・・(めぐもこの時代の人達に会ってみてそう思うしな)。それで話戻るけどおばちゃん、男の人と2人きりでランデブーって何すればいいの?!」
「んー、おばちゃんも旦那とはお見合い結婚だったしねえ・・・まあ誘ったのはあっちなんだし、任しときゃいいさ」
「はぁ・・・(なんか現代的だよな、ヨネさんて)」
そして、なおも数日何着て行こうとか化粧はどうしようとか悩んでいるうち、すぐにその日がやってきてしまう。
次回 ランデブー
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