温もり
あれからいろいろと準備をしていたら、夜が訪れていた。雨は止んでいたが、空には暗雲が広がっている。
翔からの作戦では、見回りが終わる深夜に病室を抜け出し、非常階段から外に出ると言っていた。
それまでの間は体を休めるように、と念を押されて、僕はベッドで横になっている。
……やっぱり、こわいな。
でも、翔がいるから、一人じゃないから、大丈夫……
布団をぎゅっと掴み、頭でその言葉を繰り返していた。
そのとき、布団がめくられて、翔が隣に横たわる。
「どうしたの、翔?」
「俺は何でもないよ……ただ、智里が不安そうだったから」
そう言うと、翔は僕の頭を優しく撫でる。
「俺が隣にいるから、寝ときなよ」
……あぁ、翔は優しいな。そっちも眠いはずなのに……いつも助けられてばかりだ。
「あのね、翔。僕、夢ができたよ。翔とね、海が見たい……僕も、いろんな景色を見てみたい……
……ずっと、一緒にいちゃ、だめかな」
僕はたどたどしい口調で、なんとか思いを伝える。
翔は何も言わずに、ぎゅっと僕を抱きしめた。
翔の温もりが伝わってくる。心臓の鼓動音を子守唄に、僕は眠りについた。
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