第13話 密会

告解室に入ると、いつもの薄暗い灯りに包まれた。二人で話すにはここがちょうどいい。


——大司教と聖女が、頻繁に話し込んでいればさすがに怪しまれる。告解室は、人目を欺くにはちょうどいい場所だった。


(出会って最初の頃は、とにかく失礼な人間だと思ったけれど……)


驚くことに、今では教会の中で唯一……本音を交えて話せる相手かもしれない。きっと、お互いに“異質”なのがかえっていいのだろう。


「大司教様、お待たせいたしました」


「いえ。あなたも忙しいでしょうから。……まさか“豊穣の聖女”として、ここまで有名になるとは思いませんでした。もはや、私の名よりあなたの名の方が、民には知れ渡っているでしょう」


「ふふっ、まあ私の魅力をもってすれば、当然のことでしょう?」


「……少しは大人になったかと思えば、そういうところは、変わらないのですね」


仕切られ、薄暗い告解室では顔は見えない。だが、どんな表情をしているのかは、ありありと想像できた。まあ、無駄に苛立たないためには見なくて良かったかもしれない。


……いずれにせよ、今日は“例の話”を進めなければ。


「それにしても、あなたに協力すれば……本当に紹介してくれるんでしょうね?見目のいい貴族か、ちゃんとしたお金持ちを」


「……私も貴族のはしくれですから、親戚に何人か心当たりはあります。ですが、まだその出会いとやらを諦めてなかったのですね。それに、あくまで紹介までのお約束で、相手があなたを気に入るかは別ですが……」


「私のことを気に入らないような、趣味の悪い男性を紹介しないでくださる?」


「……気に入る方のほうが、よほど変わった趣味のような……」


「何ですって?」


時が経っても、二人で話しているときだけは、まるであの頃のままのようだ。緊迫した話の前に、敢えて軽口を叩いて笑い合う。


「……ともかく、本題に入りましょうか。ラファエル大司教様」


「そうですね。……あなたには次の収穫祭で“神託”を得てもらいます。汚職に塗れた教会内部を一掃するためにね」


鼓動が、早くなる。神託を創り出すとは、なんて……罪深いのだろう。でも、今は……それ以外の選択肢はないように思われた。


「わかり……ました……。私は、何と告げれば良いのでしょうか?」


静けさの中、一段とひそめた声が、それでも暗闇にはっきりと響いていた。



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