第2話 イヤホンの秘密
次の日の7時51分、いつもと変わらず電車がホームにやってくる。昨日は威勢よく「話しかける!」と決心したものの、いざその時が来てしまうと緊張してしまう。
電車に乗り込み、いつもの特等席に座る。しばらく電車に揺られ、次の駅に着く。そしていつも通り君もあの席に座った。
話しかけるって言っても、何て話しかけたらいいんだ?今更ながら思った。毎朝同じ車両乗ってる以外全く共通点もないのに話しかける理由が無いじゃないか。
あの子は今日もスマホを見ながらニコニコとしている。何を見ているんだろう。
まさか、彼氏...!?
よく考えればそうだ、あんな可愛くて進学校に通ってるからきっと頭もいいんだろう、そんな完璧な女の子どうせ彼氏の一人や二人いてもおかしくないよな。
そう考えたらなんだか、話しかけようとしていた自分が恥ずかしくなってしまった。どうせ話しかけても、モブキャラとして扱われるだけだ。
なんだか少し嫌な気持になってきたのでイヤホンを着けて音楽を聴くことにした。
学校の最寄り駅に着き、喉が渇いたのでホームの自動販売機でジュースを買うことにした。すでに電車は次の駅に向かい、線路にはもう電車はいない。
いちごミルクを買って改札に向かおうとしたとき。
「あっ...」
俺は何もないところで躓いてしまった。運よく転ばなかったものの、振動で耳のイヤホンが片方落ちてしまい、そのまま線路に落ちてしまった。
やばいどうしよう。今までこんな経験はなかったため焦る。
「イヤホン落ちちゃいましたよね、大丈夫ですか?」
後ろからそんな女の人の声が聞こえた。
「そ、そうなんですよ」
そう言い俺は振り向く。するとそこには。
電車のあの子がいた。
「あ、あ、えっと」
あの子から話しかけられた驚きで、うまく言葉が出てこない。そんな俺を見て
「駅員さん呼んできますね!」
あの子は駅員さんを呼びに行ってくれた。
その後駅員さんがやってきて、何とかイヤホンは救出された。
「よかったですね、イヤホン戻ってきて」
あの子は満足そうに言った。この子は声も女の子って感じで可愛らしい。
「ありがとうございます、助かりました」
「いえいえ!じゃあまた!」
そう言ってあの子は振り返り立ち去ろうとする。あの子の背中を見て何故か心がモヤモヤした、これでいいのか俺。でもあの子にはきっと彼氏が...
いやいや、せっかくのチャンス、絶対逃しちゃだめだ。
「あのすいません!」
俺がそういうとあの子は「ん?」とこちらに振り返る。
「も、もしよかったら、連絡先交換したいです」
あの子は驚いたような顔をして、3秒ほど沈黙が続いた。そしてそのまま笑顔になって。
「いいですよ!」
そう言い、こちらに戻ってきてくれた。
スマホを出して連絡先を交換した。連絡先の名前には「彩芽」と書かれている。
「アヤメさんで合ってますか?」
「はい!ユウキ君ですね!」
「そうです、アヤメさんは何年生ですか?」
「二年生です!」
「ほんとですか!じゃあ一緒です!」
「わー偶然!」
そんな感じで俺たちは同じ学年という共通点で盛り上がった。
「あ!もうこんな時間!朝小テストがあるので行きます!」
そう言いアヤメさんは急いで改札まで向かった。朝から小テストか、さすが進学校だ。
俺も学校に向かい、タクマとリョウに今日の出来事を報告した。
「おぉ!ユウキすげえじゃん!」
タクマはまるで自分のことかのように喜んだ。リョウも
「そんな奇跡あるもんなんだな」
と関心していた。
「じゃあもう明日からは電車の中で話しかけれるな」
タクマは笑顔で言った。
「電車の中で!?」
俺は思わず大きな声を出してしまった。
確かに今日話すことはできたけど、だからと言ってもう電車で話すことなんてできんのか...
心配になる俺とは反対に、窓から見える空は雲一つない快晴だった。
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同じ車両の子が可愛すぎたから話しかけようと思うんだ 鈴木。 @suzuki_monokaki
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