番外編・『初デートは、少し照れくさい』
高校に入って、ようやく同じ制服を着るようになった彩花と蓮。
勉強に部活に忙しい毎日だけれど、ふたりの時間は少しずつ、でも確実に増えていた。
ある日曜日。
「今日は、初めて“デート”ってやつしてみるか」
と蓮が言ったとき、彩花の心臓はまるで跳ねたように高鳴った。
待ち合わせは、あの公園。
制服ではなく、私服で向かうのはなんだか新鮮で、鏡の前で何度も髪を整えてしまった。
「お待たせ…!」
「……似合ってるな。いつもと雰囲気違う」
「っ……そっちこそ、かっこよすぎ!」
ふたりして、真っ赤になって笑いあう。
映画を見て、パンケーキを食べて、帰りに少しだけ遠回りして――
「なあ、彩花」
「ん?」
「俺、最初はただ助けたいって気持ちだった。でも今は、ちゃんと恋してる。大事にしたいって思ってる」
彩花の目が、ゆっくり潤む。
「私も。最初は恥ずかしかったけど…蓮くんに出会えて、本当によかったって思ってる」
照れながらも、二人の手が、そっと重なった。
あの時は繋げなかった手。
今は、温かくて、確かにつながっている。
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